エデンより彼方に | |||||||||||||||||||||||||||
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映画の森てんこ森■読む映画試写会■映画レヴュー | |||||||||||||||||||||||||||
エデンより彼方に (2002) | |||||||||||||||||||||||||||
FAR FROM HEAVEN | |||||||||||||||||||||||||||
映画『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM
HEAVEN 』をレヴュー紹介します。 映画『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』を以下に目次的に紹介する。 ■映画『 エデンより彼方に 』のポスター、予告編および映画データ ■映画『 エデンより彼方に 』の解説 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 エデンより彼方に 』のスタッフとキャスト ■映画『 エデンより彼方に 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 エデンより彼方に 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 エデンより彼方に 』を観てホンネ… ■映画『 エデンより彼方に 』のスタッフの関連作品 ■映画『 エデンより彼方に 』の歴史的・社会的背景 ■映画『 エデンより彼方に 』のストーリー ■映画『 エデンより彼方に 』の結末 ■映画『 エデンより彼方に 』の感想 ■映画『 エデンより彼方に 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 8つ星 | |||||||||||||||||||||||||||
■映画『 エデンより彼方に FAR FROM HEAVEN 』のポスター、予告編および映画データ | |||||||||||||||||||||||||||
エデンより彼方に
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 エデンより彼方に FAR FROM HEAVEN
』の解説 映画『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』は、2002 年ヴェネチア国際映画祭でジュリアン・ムーア(『 めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS 』等に出演)が女優賞を獲得するなど、数々の輝かしい賞を獲得、ノミネートも受けたトッド・ヘインズ監督作品。『 エデンより彼方に 』には、ジョージ・クルーニーとスティーヴン・ソダバーグが製作総指揮にクレジットしている。それにしても、この『 エデンより彼方に 』の撮影中、妊娠していたというジュリアン・ムーアはよく頑張りました! 映画『 エデンより彼方に 』のストーリー...可愛い二人の子供と、社会的名声を得た夫(デニス・クエイド:『 オールド・ルーキー (2002) THE ROOKIE 』等に出演)を持ち、1950 年代アメリカのコネチカット州郊外で何不自由なく生活している主婦キャシー(ジュリアン・ムーア)。しかし、ある夜、夫が別の"男性"と関係しているのを目撃してしまったことから、彼女の生活は混乱の中に。そんな中、彼女が慰めを見出したのは、アフリカ系アメリカ人の庭師レイモンド(デニス・ヘイスバート)との友情だった…。映画『 エデンより彼方に 』は、 50 年代のアメリカを考えさせる映画でもある。蛇足だが「 エデンより彼方に」は一体何があるのだろうか? |
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【『 エデンより彼方に 』のスタッフとキャスト】 | |||||||||||||||||||||||||||
監督: トッド・ヘインズ Todd Haynes (Directed
by) 製作: ジョディ・パットン Jody Patton (producer) クリスティーン・ヴェイコン Christine Vachon (producer) ディクラン・ボールドウィン Declan Baldwin (co-producer) ブラッドフォード・シンプソン Bradford Simpson (co-producer) ジャン=チャールズ・リヴァイ Jean-Charles Levy (associate producer) 製作総指揮: ジョージ・クルーニー George Clooney (executive producer) スティーヴン・ソダーバーグ Steven Soderbergh (executive producer) ジョン・ウェルズ John Wells (executive producer) エリック・ロビソン Eric Robison (executive producer) トレイシー・ブリム Tracy Brimm (executive producer) ジョン・スロス John Sloss (executive producer) 脚本: トッド・ヘインズ Todd Haynes (screenplay) 撮影: エドワード・ラックマン Edward Lachman (Cinematography by) 音楽: エルマー・バーンスタイン Elmer Bernstein (Original Music by) 製作デザイン: マーク・フリードバーグ Mark Friedberg (Production Design by) 衣装: サンディ・パウウェル Sandy Powell (Costume Design by) 出演: ジュリアン・ムーア Julianne Moore キャシー・ウィテカー Cathy Whitaker デニス・クエイド Dennis Quaid フランク・ウィテカー Frank Whitaker デニス・ヘイスバート Dennis Haysbert レイモンド・ディーガン Raymond Deagan パトリシア・クラークソン Patricia Clarkson エレノア・ファイン Eleanor Fine ヴィオラ・デイヴィス Viola Davis シビル Sybil ジェームズ・レブホーン James Rebhorn ボウマン医師 Dr. Bowman ベット・ヘンリッツ Bette Henritze リ−コック夫人 Mrs. Leacock マイケル・ガストン Michael Gaston スタン・ファイン Stan Fine リンゼイ・アンドレッタ Lindsay Andretta ジャニス・ウィテカー Janice Whitaker ライアン・ウォード Ryan Ward デヴィッド・ウィテカー David Whitaker ジョーダン・パリヤー Jordan Puryear セーラ・ディーガン Sarah Deagan ジューン・スキッブ June Squibb 年配の女性 Elderly Woman オリヴィア・バークランド Olivia Birkelund ナンシー Nancy ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |||||||||||||||||||||||||||
ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 エデンより彼方に 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 私は日本公開前に字幕スーパーなしの英語で観たので、わかる範囲でレヴューします。映画データについては調査した時点と公開される時点で異なる場合があります。本作の内容については、語学力と経験・常識不足のため、間違いや勘違いや適切でない表現があるかもしれません。どうかご理解賜りますようお願いいたします。また、リンクやメールをいただく場合はここを必ずお読みくださいますように。 ▲TOPへ 【映画『 エデンより彼方に 』を観てホンネ…】 わたし的には、この映画『 エデンより彼方に 』はストーリーよりも、ノスタルジックな映像とジュリアン・ムーアの美しさと衣装が気に入っている。映画はとにかく美しい。それと、一寸言わせて頂くなら、レイモンドの役がせっかくならデンゼル・ワシントン Denzel Washington だったら共鳴できるのにナ〜。なんて、『 エデンより彼方に 』のいきなり率直な感想を書いてしまいました。スミマセン、欲張りですか。 ▲TOPへ 【映画『 エデンより彼方に 』のスタッフの関連作品】 『 エデンより彼方に 』の優れた雰囲気のセットを創った製作デザインのマーク・フリードバーグは 『 プリティ・ブライド (1999) RUNAWAY BRIDE 』 『 ニューヨークの恋人 (2001) KATE & LEOPOLD 』。観るものを画面に引き込むカメラワークが際立つ、複数の撮影賞に輝くエドワード・ラックマンは 『 ヴァージン・スーサイズ (1999) THE VIRGIN SUICIDES 』 『 エリン・ブロコビッチ (2000) ERIN BROCKOVICH 』等でも撮影の腕を見せてくれる。この映画『 エデンより彼方に 』はストーリーにどっぷり浸かるのもいいし、美しいスクリーンとジュリアン・ムーアの '50年代のドレスにうっとりするのもいい。『 エデンより彼方に 』衣装担当のサンディ・パウウェルは 『 恋におちたシェイクスピア (1998) SHAKESPEARE IN LOVE 』等でも活躍し、年代に合わせた衣装をデザイン、製作して観客の目を楽しませてくれる。『 エデンより彼方に 』製作のクリスティーン・ヴェイコンと製作総指揮ジョン・ウェルズは 『 ストーカー (2002) ONE HOUR PHOTO 』、製作総指揮のご存知、俳優のジョージ・クルーニーは 『 フェティッシュ (1996) CURDLED 』 『 シン・レッド・ライン (1998) THE THIN RED LINE 』 『 オーシャンズ11 (2001) OCEAN'S ELEVEN 』 『 ソラリス (2002) SOLARIS 』 『 コンフェッション (2002) CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND 』 『 ディボース・ショウ (2003) INTOLERABLE CRUELTY 』 『 オーシャンズ12 (2004) OCEAN'S TWELVE 』等で有名。 ▲TOPへ 【映画『 エデンより彼方に 』の歴史的・社会的背景】 『 エデンより彼方に 』のストーリーに入る前に 1950 年代のアメリカについてチョットお勉強です。 アメリカの当時の経済は、第二次世界大戦後の好景気で、GNP(国民総生産)が5千億ドル(当時$1=\ 360 換算で 180 兆円)と豊かであった。アメリカは目標の夢の半兆ドル経済の達成で経済は潤っていた。共和党のアイゼンハワー大統領( 1953 〜 61 まで任期)のもと、「アイゼンハワーの繁栄」と呼ばれていた時代である。 しかし、その一方、アメリカは、まったく体制の異なる共産主義のソ連との経済競争や体制の成長など、ソ連の存在と動向に不安を感じていた。 1957 年 10 月にソ連はアメリカに先駆けて人工衛星スプートニクの打ち上げに成功した時点で、アメリカは宇宙開発でソ連に差をつけられていた。また、ソ連によるアメリカ大陸にも届く大陸間弾道ミサイル( ICBM )の配備目前という「ミサイルギャップ」が、アメリカにとって大きな戦略的問題に発展していた。それ故、アメリカは「停滞より進歩を、継続より変化を、対立より強調を」という全体主義的気運の高まりがあった。 アメリカ国内では、公民権運動 civil rights movement ( 1950 と 1960 年代にアメリカ黒人に平等な権利を獲得するための運動)や女性解放運動ウーマン・リブ Woman’s lib のような新しい男女関係を求める社会運動が高まろうとしていた。 そんな時代の流れの中で、この映画の題材としている 1957 年当時では、黒人は未だに被差別人種であり、女性は家庭に縛られる対象であり、ホモ・セクシュアルはタブーであった。この映画のプロットのバックグラウンドはここにある。 黒人差別問題として考えると、黒人に対して、レストラン、ホテル、トイレ等の施設、公共の交通機関における人種隔離政策は、第二次大戦により崩れ始めたことは事実だが、依然として差別問題は根強く残っていた。戦争による好景気で、多くの南部黒人が北部や西部の都市に流出した。黒人はアメリカの繁栄を下から支える役割であるとみなされ、差別のないはずの所でもさほど黒人はよい生活をできなかった。 また、女性解放運動として考えると、この '50 年代の女性は、主婦( housekeeper )として文字通り家庭を守るために、家庭に押し留められ、良妻賢母として夫に従うという生活であった。自分の生活に疑問を感じ異議を唱えることも出来なく、女性も大きな変化はなかった。 繁栄の '50 年代のアメリカは、統制的、全体主義的国家であったわけだが、アメリカ社会内部では多くの問題を抱えていた。この映画は、やがて次の時代の潮流でもある、人間としての解放(肌の色の差別のない真の平等、女性の解放、そしてホモ・セクシュアリティへの理解)を浮き彫りにしている。 ▲TOPへ それでは、ストーリーです。 【映画『 エデンより彼方に 』のストーリー】 【エデンより彼方に 第01段落】 米国はニューイングランド New England 、コネチカット州のハートフォード Hartford, Connecticut という郊外の町。時は 1957 年。メランコリックなピアノ演奏のBGMに紅葉の美しい秋である。車も年代ものばかりで、落ち着いた秋のニューイングランドの光景にしっくりと馴染んでいた。 【エデンより彼方に 第02段落】 主人公キャシー・ウィテカー(ジュリアン・ムーア)の乗るのは水色と白のツートンの流線型のステーションワゴン。買い物から帰宅したキャシーが降り立った所は、あまりに広いので通りかと思ったら、屋敷内の広い庭だった。小学生の息子デヴィッド(ライアン・ウォード)と娘ジャニス(リンゼイ・アンドレッタ)が母を迎え、おねだりも拒否されて、キャシーのしっかり者の母親像を見せる。躾が厳しくなされている古き良きアメリカ。 【エデンより彼方に 第03段落】 もう一人出迎えるのは、お手伝いさんのシビル(ヴィオラ・デイヴィス)。アフリカ系アメリカ人の住み込みメイドさんで、三十歳くらい。シビル役のヴィオラ・デイヴィスは 『 きみの帰る場所/アントワン・フィッシャー (2002) ANTWONE FISHER 』 『 ソラリス (2002) SOLARIS 』等で、この映画のメイドさんとは全然違って、もっと個性のある役を与えられている。買い物袋を片付けていると訪れたのが、キャシーの親友エレノア・ファイン(パトリシア・クラークソン: 『 グリーンマイル (1999) THE GREEN MILE 』等に出演)。 【エデンより彼方に 第04段落】 キャシーの夫フランク・ウィテカー(デニス・クエイド: 『 オールド・ルーキー (2002) THE ROOKIE 』 『 コールド・クリーク 過去を持つ家 (2003) COLD CREEK MANOR 』 『 アラモ (2003) THE ALAMO 』 『 デイ・アフター・トゥモロー (2004) THE DAY AFTER TOMORROW 』 『 フライト・オブ・フェニックス (2004) FLIGHT OF THE PHOENIX 』等に出演)は、テレビ等を商う電器会社マグナテック Magnatech の重役で、社内の信望も厚く社会的にも名声をほしいままにしている成功者。だから自宅もこんなに立派なのか。キャシーは良妻賢母で、夫には愛し尽くして、子供達には可愛がりながらも夫を立てて、結構厳しく育てている。美貌の持ち主で、慎ましやかで、家の整頓もし、地域社会での付き合いもしっかりこなし、パーティでも優れたホステス振りをこなし、と、百点満点と言えそうな理想的な主婦である。 【エデンより彼方に 第05段落】 この"主婦の鑑"のキャシーに、雑誌社から取材が来て、上品な老女のリ−コック夫人(ベット・ヘンリッツ)がインタヴューする。フランク&キャシー・ウィテカー夫妻はマグナテック社の顔とも呼ばれ、" Mr. and Mrs. Magnatech "と称せられるほどの、ハートフォードの町の理想的な夫婦、完璧カップルなのである。居間でリ−コック夫人からインタビューを受けていると、庭に見慣れないアフリカ系アメリカ人の大柄の男性が見えた。キャシーはベランダから出て、その男に何者かと怯えて声をかける。リ−コック夫人は警察を呼びましょうかとさえ言っている。黒人に対する恐怖感が大きく描かれるのは 『 女神が家(ウチ)にやってきた (2003) BRINGING DOWN THE HOUSE 』も同様だ。 【エデンより彼方に 第06段落】 その男性は 35 歳くらいで、話を聞くと、オーティスという庭師の息子だと言う。オーティスというのはウィテカー家でずっと庭師をしていて、入院したとキャシーは聞いているので、彼女が安否を気遣うと、亡くなったと言う。キャシーはさっきの失礼の許しを乞い、それは御愁傷さまです、というように片手を男の肩に伸ばして哀悼の意を示した。そこを取材の写真班の男は写して、後日、「黒人にも優しいウィテカー夫人」と有名になる。なお、この男性は父親の跡を継いでこの屋敷に仕事をしに来ている庭師のレイモンド・ディーガン(デニス・ヘイスバート)という。 【エデンより彼方に 第07段落】 夫フランクは、ある晩、会社の帰りに映画館に寄り、その後、気になる"二人連れの男性"の跡を追って路地裏へ入っていった。すると、そこは男性ばかりのバー。IDとして免許証の提示を求められ、カウンターでスコッチを注文する。すると、オレも同じのを、と言う男の声。そして視線を合わせる二人…。あぁ、ホモバーだったんだ。気のせいか、グラスを持つフランクの右手の小指が上がっていたゾ! 【エデンより彼方に 第08段落】 専業主婦のキャシーは、お手伝いさんもいて、優雅な生活。広くて美しい邸宅で、毎日ワンピースに身を包み、キレイキレイしている。ジュリアン・ムーアは 『 妹の恋人 (1993) BENNY & JOON 』 『 逃亡者 (1993) THE FUGITIVE 』 『 ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク (1997) THE LOST WORLD: JURASSIC PARK 』 『 ブギーナイツ (1997) BOOGIE NIGHTS 』 『 理想の結婚 (1999) AN IDEAL HUSBAND 』 『 マグノリア (1999) MAGNOLIA 』 『 ハンニバル (2001)HANNIBAL 』 『 めぐりあう時間たち (2002) THE HOURS 』等で観ているが、やはりハリウッドの売れてる女優さんだな〜と、この映画での彼女の美しさに見とれてつくづく思ったデス。 【エデンより彼方に 第09段落】 なお、ジュリアン・ムーアが妊娠中だからか、ワンピースの形はどれも釣鐘状の大きなギャザースカートで、お腹は目立たなく演出されていた。そのギャザースカートは近頃では見かけない、非常に優雅で重みのある当時のデザインの衣装で、スタイルがいい人だから似合うのだろうけど、幸も一度こんな衣装を着てみた〜いと思いながら、服が変わるたびに見とれていた。色や生地の材質が服ごとに変わり、当時のエレガントな女性役に似合っている。この日は親友のエレノアとナンシー(オリヴィア・バークランド: 『 ボーン・コレクター (1999) THE BONE COLLECTOR 』等に出演)やら三、四人を招いてお茶を飲んでお喋りタイム。キャシーは赤いワンピース、勿論ギャザースカートの。それに友達も、撮影効果を狙ったらしく全員赤っぽい暖色系でまとめている。 【エデンより彼方に 第10段落】 他愛もないおしゃべりをして玄関先で彼女らを見送ると、キャシーの巻いていた薄紫色のシフォンのネッカチーフが風で吹き飛ばされた。裏庭まで飛んでいったらしい。それでキャシーは庭をゆっくり見て歩いた。すると、庭師のレイモンドが丁度拾ってくれていて、二人は言葉を交わす。色の具合が奥さんのだと思いましたよ、なんて、繊細な台詞を言う男性なのだ。聞くと、 11 歳の娘セーラ(ジョーダン・パリヤー)がいて、妻は娘が5歳の時に亡くなっているそうで。娘セーラの写真を見せられると、キャシーは何て可愛いんでしょう、と社交辞令を言って、何となく二人は親近感を持つ。なお、庭師は住み込みでなくて、決めてある園芸店から定期的に来てもらっているようだ。 【エデンより彼方に 第11段落】 その夜、晩御飯にも夫フランクは帰宅せず、子供二人と食事していると、夫から電話で、会社で残業しているとのこと。キャシーは思い立って、コーヒーのポットとプレッツェルを差し入れに行くことにした。夫思いの優しい妻…。夜遅くの会社は受付の夜警さんがいるだけのシーンとした空間。エレベーターに乗り、夫のオフィスに入って行くと、部屋は暗くてデスクに夫はいない。?と思い、明かりが漏れていた部屋を開けた。すると、何と、夫が別の"男"とキスし合っている!呆然と立ち尽くすキャシー。男は小走りで去って行く。キャシーも泣きじゃくって走ってオフィスを後にする。 【エデンより彼方に 第12段落】 キャシーは自宅の真っ暗な居室でショックで泣いている。バツが悪そうに帰宅する夫フランク。そして、フランクは、「昔、"問題 problem "があったんだ」と妻に告白。でも、医者にも誰にも言っていないと言う。それで、翌日、早速、医師のボウマン博士(ジェームズ・レブホーン: 『 セント・オブ・ウーマン/夢の香り (1992) SCENT OF A WOMAN 』 『 リプリー (1999) THE TALENTED MR. RIPLEY 』 『 プルート・ナッシュ (2002) THE ADVENTURES OF PLUTO NASH 』等に出演)に診察してもらった。ホモ、ゲイというのは、現在では自由ですよね?ところが、当時は治療しなければならなかったようだ。週2回の心理療法、電気ショック療法、ホルモン療法というのがあり、先ずは投薬から始めることにする。フランクは妻の生活、家族の生活を破滅したくないと医師に頼み、妻と連れ立って帰るが、機嫌が悪い。キャシーが一生懸命に取り繕うとすればするほど、夫のイライラ度は大きくなる。 【エデンより彼方に 第13段落】 美術館のピカソ展に友人の勧めで行くと、庭師のレイモンドが娘セーラを連れて観に来ていた。偶然の出会いにキャシーは興奮して、自分から声をかけにいく。レイモンドは娘に外で遊ぶように指示し、レイモンドとキャシーの二人で絵を観て回る。この二人だけの世界に入り込んでいたキャシーには気付かなかったが、周囲の白人の客たちは、皆二人を見てヒソヒソ話。このニューイングランドは、地域社会、隣人同士、全員が知り合いという、結束の強い、白人中心の地である。映画の背景では、黒人というのは少数派で、料理の召使いと庭師に雇っているだけという場所柄。キャシーのこの行動は皆の好奇の的となった。噂を聞いた親友エレノアは親しげな二人を心配して電話してくる。 【エデンより彼方に 第14段落】 ウィテカー家でパーティの夜。話題は黒人のこと。このハートフォードの町には黒人はいないけど、少しは危険な黒人もいる。でもウィテカー夫人は黒人に優しい、とか。フランクはホモの治療が重荷になっているのか、悪酔いして悪態を見せている。それを見てエレノアは、ご主人どこか調子が悪いのでは、とキャシーに心配して訊くが、仕事が忙しくてストレスのせいだとキャシーは誤魔化している。そして、パーティ客が帰り、後始末していると、夫は突然キャシーに抱きつき、その直後、イライラ。挙句に、キャシーの顔面を殴ってしまうのだ。自分のやったことに驚くフランクに、大丈夫よ、と健気に答えるキャシー。 【エデンより彼方に 第15段落】 翌日エレノアが訪ねて来て、キャシーが髪の毛で隠している殴られた痕を発見。夫婦間の問題を心配してくれるが、いくら親友でも、夫がホモだとは言えない。泣いてエレノアを見送ると、庭師のレイモンドが丁度居合わせた。彼女の泣き顔を見て、結婚生活をしていれば夫婦の問題って起こりますよ、と慰めてくれる。そして、用事でトラックで行く所があるので、気分転換にご一緒にどうですか、とまで誘うのだ。一旦は断ったものの、キャシーは心が動いて、コートを手に、いそいそと玄関から出てきた。それを窓越しにメイドのシビルが見ている。黒人の立場として、気遣っているシビル。 【エデンより彼方に 第16段落】 紅葉の美しい公園か林に来た。美しさにキャシーは元気を取り戻す。額の痣(あざ)も夫に殴られたのだとレイモンドは気付き、余計に慰めてあげようという気になる。散歩道をキャシーから進んで一緒に語って歩き、秋の散策を楽しく過ごす。このくらいにしておけばいいのに、お昼の食事を今度はレイモンドが誘うのだ。行きつけの黒人だけの食堂に行くが、二人連れで入っていくところを知人の老婦人(ジューン・スキッブ: 『 アバウト・シュミット (2002) ABOUT SCHMIDT 』等に出演)に目撃されてしまった。 【エデンより彼方に 第17段落】 食堂内では客も店の人も全員が黒人で、白人を連れて来たレイモンドを好奇と非難の目で見つめる。キャシーもちょっとドギマギするが、レイモンドと温かい気持ちで一緒にいられることだけで今は幸せ。音楽に合わせてダンスまで二人はしてしまう。「友情」を超えた、「淡い愛情」に育っているのは間違いない。ゆったりと午後を過ごしたキャシーは帰宅すると、レイモンドがさっき見つけてくれた花をつけた木の枝を早速ウキウキと花瓶に挿す。メイドのシビルは、奥様のご機嫌に戸惑いの顔。 【エデンより彼方に 第18段落】 さあ、翌日から町では凄い噂。娘ジャニスのバレー教室でも、付き添いの保護者達の露骨な冷たい視線。エレノアはまた電話してきて、噂のひどさを教えてくれる。でもキャシーとしたら、一緒に散歩してお話を聞いてもらっただけ、という意識だ。そこに夫フランクがいつになく早く帰宅して、噂は本当か、と怒って訊く。築き上げた自分の名声、会社の評判、子供達にまで影響が及ぶのが分からないのか!こう叱られて、キャシーは二度と会わないと約束する。でも…、会うのだ。レイモンドに電話して町の小さなスナックで落ち合うが、迷惑がられて追い出されてしまった。それで、街角で深刻話。これ以上お友達でいることはできなくなった、とキャシー。レイモンドは、人種を超えていたわり合うことこそ大切なのに、と言って、別れたがらない。咄嗟にキャシーの腕を掴むと、「止めろ!」と白人男性の強い声。それに、街を行く人達の強い視線。 【エデンより彼方に 第19段落】 紅葉の季節が何時の間にか冬になっていた。クリスマスイヴ。一見、平和そうに、ウィテカー家ではクリスマスツリーを飾った居間でプレゼントを開け合っている。幼い娘ジャニスには、習っているバレーのシューズ。夫婦同士では、旅行のパンフレット。夫のホモ騒動とその治療、妻の黒人男性との噂、そんなことを夫婦で一ヶ月ほど旅行して忘れようじゃないか、と夫がこの前、提案したのだった。バミューダ Bermuda 、アカプルコ Acapulco 、リオデジャネイロ Rio de Janeiro 、マイアミ Miami 、どこにしよう、と楽しそうな夫婦。夫の一声でバミューダと決まった。 【エデンより彼方に 第20段落】 日光の燦々と注ぐ暖かいバケーション。大晦日、新年を迎える秒読み。 A happy new year! とはしゃぐ旅行者達。キャシーは新しいドレス、フランクは白いタキシード。ダンスしてシャンペン。もう万事上手くいけるのネ?・・・ ▲TOPへ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【エデンより彼方に 第21段落】 ホテルのプールで日光浴していると、向こうのグループの一人の男がチラチラと視線をフランクに向けている。フランクもその男が気になる。まさか!妻の忘れ物を取りにフランクがホテルの部屋に戻ると、その男は無言でついて行った。そして、客室で、バスローブだけをまとったその男がフランクに…。 【エデンより彼方に 第22段落】 休暇を終え、夫婦は子供たちの待つ自宅へ帰ってきた。留守中はメイドのシビルが面倒見てくれるから、お金持ちはいいな。息子デヴィッドは、学校で三人の男子が黒人の女の子に石を投げて除籍されたことを興奮して話す。でも、キャシーはそれがレイモンドの娘セーラだとは思いもよらない。セーラは、数日前、父親に白人の恋人がいると少年達に苛められ、追いかけられて投石されたのだった。 【エデンより彼方に 第23段落】 次の日、夫フランクは思いつめた顔で帰宅して、突然泣き出した。妻だけでなく息子と娘のいる前だったので、子供たちは父親の泣く姿にショックを受ける。子供たちを二階へ行かせてキャシーが話を聞くと、また誰かに恋をしてしまった、と。フランク自身、悪気(わるぎ)があってそうなるのではないからこそ彼は悩んで苦しむのだ。離婚しましょう、という言葉が初めてキャシーの口から出た。エレノアには、やっと真実を話せた。夫がホモという衝撃的な事実を。それに、レイモンドのことを思ってしまうのだと告白もする。それを聞いてエレノアは何とも言えない当惑顔。キャシーは、何もなかったのよ、と言うが、この時代、この町では、白人と黒人の付き合いなんて通用しないのだ。 【エデンより彼方に 第24段落】 じっと静観してきたメイドのシビルだが、投石されて怪我をしたのはセーラだということを、数日後にキャシーに教える。この家庭に漣(さざなみ)がまた立ってはいけないとの計らいで、シビルは黙っていたのだ。知ったキャシーは、夜だというのに、車を飛ばしてレイモンドの自宅に行く。心配するキャシーに、投石はあの時だけでないこと、皮膚の色の違いの問題だということをレイモンドは語った。そしてボルチモア Baltimore に金曜の列車で引っ越すことを伝えた。兄が職を見つけてくれていること、ここの園芸店は従兄に売ったこと、もうこの町での事は全て片付いたこと、も話す。彼女は、自分のことをミセス・ウィテカーでなくてキャシーと呼んで、と言い、その頃には独り身になっているから、会いに行きますと言うのだ。ボルチモアでは誰も私達のことを知らないのだから、と。必死に語る彼女に、今はセーラにとって大切なことを考えなければならないのだと、レイモンドは冷静に言って聞かす。肩に置いた手に手を重ね、それに彼がそっとキスして別れた。 【エデンより彼方に 第25段落】 全てを失ってキャシーは泣き崩れる。フランクから電話があるが、会社の関係で"夫婦"として顔を出す用事の連絡だった。フランクはホテルの一室から電話していて、そばには同室の男がベッドの上にいるのだ。キャシーはその用事は、金曜を外して木曜に決めた。何故?・・・金曜日、キャシーは二人の子を車に乗せて駅へ向かう。赤いオーバーコートに、ラヴェンダー色の、レイモンドがあの時、拾ってくれた思い出のネッカチーフを頭に巻いて…。何と言う未練…。車内に子供は残して、彼女だけプラットフォームへ。見つけたレイモンドは、微笑み?苦笑い?だけ見せて、手を振って、列車は出発して行った。プラットフォームで一人残されたキャシーの寂しい後姿。 【エデンより彼方に 第26段落】 子供を乗せたキャシーの水色と白のツートンのステーションワゴンが、冬空の下、動き出す。これから一体キャシーはどうやっていくのか…。それを象徴するような寒いニューイングランド地方の冬景色。 ▲TOPへ 【映画『 エデンより彼方に 』の感想】 このレヴューの冒頭で書いたが、この映画のプロットを構成する要素に、黒人差別・女性の地位・ホモセクシュアルへの不理解がある。しかし、黒人の庭師のレイモンド・ディーガン(デニス・ヘイスバート)は、黒人差別問題に真っ向から戦う姿勢ではない。主人公キャシー・ウィテカー(ジュリアン・ムーア)は、心の安らぎを得られるレイモンドを求めるわけでもなく劇的に結ばれるわけでもない。夫フランク・ウィテカー(デニス・クエイド)も、自らがホモ・セクシュアルだと公言するわけでもなく、ホモとしての人権を勝ち取るわけでもない。 幸にとっては、こういう、誠に"消化不良"の映画なのだが、見方を変えると、この映画の曖昧なエンディング( Ambiguous Ending )こそが、 50 年代のアメリカの「良き時代」だと「ノスタルジーに浸るゆとり」をアメリカ人観客に訴えたのであろうか?それとも、主人公キャシーの人間として何か突き上げてくる満たされない思いが、今までの豊かさを放棄させ、シングルマザーとして強く逞しく自立して生きていくことを選択させた、その姿に共感を覚えるのであろうか?丁度それは、当時の常識に疑問を持ち、真の権利を自分たちで手に入れようとする心の芽生えが育ってきたアメリカ国民が、豊かさを築いてきたアイゼンハワーからニクソンへの共和党政権移行を拒み、自らの将来を激動のニューリーダーであるケネディ民主党政権へと託したように・・・。 観終わって、この映画が受けた 2002 年度の賞の多さに後日になって改めてびっくりしている。米NY映画批評家協会賞 The 68th New York Film Critics Circle Awards ( NYFCC ) で5部門の受賞。オンライン映画批評家協会賞 Online Film Critics Society ( OFCS ) で6部門の受賞。全米映画批評家協会賞 The 37th National Society of Fillm Critics Awards で2部門の受賞。シアトル映画批評家賞 Seattle Film Critics / Seattle's Parallax View Awards で6部門の受賞。ロサンゼルス映画批評家協会賞 The 28th Los Angeles Film Critics Association Awards で3部門の受賞。ヴェネチア国際映画祭 Venice Film Festival で2部門の受賞。アカデミー賞は4部門でノミネート。 この映画のタイトル『 FAR FROM HEAVEN 』は直訳すれば「天国から遠く」となる。他に映画会社が考えていたタイトルは『 This Splendid Life (この素晴らしき人生)』、『 Circles In The Sun (日向の円)』、『 The Surface Of Things (物事の表面)』、『 Fall From Splendor (光輝からの陥落)』だそうだ。 ご覧になった皆さんはどのタイトルが一番よくあっているとお思いですか。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず11051文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com AlloCine : Cinema 公式サイト(英語版) http://www.farfromheavenmovie.com/ TV Guide Online - [Movie Database] http://www.tvguide.com/Movies/database/ShowMovie.asp?MI=44052 いつも参考にしておりますallcinema ONLINE さんには、2003年05月14日の時点で[ 解説 ]は出ていませんので、これをアップしました。Thanks to allcinema ONLINE. |
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■映画『 エデンより彼方に 』の更新記録 2003/04/11新規: ファイル作成 2004/07/09更新: ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式 2004/12/26更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 2005/03/30更新: ◆データ追加 2005/10/06更新: ◆追記 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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