マリー・アントワネットの首飾り | |||||
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映画の森てんこ森■映画レヴュー | |||||
マリー・アントワネットの首飾り (2001) | |||||
THE AFFAIR OF THE NECKLACE | |||||
映画『 マリー・アントワネットの首飾り (2001)
THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』をレヴュー紹介します。 映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』を以下に目次別に紹介する。 ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の解説及びポスター、予告編 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。 ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の映画データ ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の主なキャスト ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』のスタッフとキャスト ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の<もっと詳しく> <もっと詳しく>は映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。 ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の結末 ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の感想(ネタばれご注意) ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の更新記録 >>「映画解説・レヴュータイトル一覧表」へ(画面の切り替え) |
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幸の鑑賞評価: 8つ星 | |||||
■映画『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) 』の解説及びポスター、予告編 | |||||
マリー・アントワネットの首飾り
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■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の解説 映画『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』は、フランス革命を引き起こす原因の一つと言われる「首飾り事件」を描いた、『 花嫁のパパ (1991) FATHER OF THE BRIDE 』等のチャールズ・シャイア監督作品。映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の豪華絢爛な衣装は、 2001 年のアカデミー衣装デザイン賞にノミネート。映画に登場する“マリー・アントワネットの首飾り”の美しさにはウットリだ。 映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』では、事件を引き起こす危険を恐れない女性、ラ・モット伯爵夫人を『 ボーイズ・ドント・クライ (1999) BOYS DON'T CRY 』と『 ミリオンダラー・ベイビー (2004) MILLION DOLLAR BABY 』でアカデミー賞に輝いたヒラリー・スワンク、彼女にまんまと騙されるロアン枢機卿を、イギリスの名優ジョナサン・プライス(『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』等)、知らないうちに事件に巻き込まれてしまう悲劇のフランス王妃マリー・アントワネットを『 パトリオット (2000) THE PATRIOT 』のジョエリー・リチャードソン、怪しげなカリオストロ伯爵を『 スリーピー・ホロウ (1999) SLEEPY HOLLOW 』のクリストファー・ウォーケンが演じる。 映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』では、ラ・モット伯爵夫人は悪い人ではない様に描かれている。 |
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●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。 Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com. Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc. |
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■映画『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』の映画データ | |||||
上映時間:117分 製作国:アメリカ 公開情報:日本ヘラルド映画 アメリカ初公開年月:2001年11月30日 日本初公開年月:2002年2月16日 ジャンル:ドラマ/サスペンス/歴史劇 《米国コピーTagline》 Her Birthright Was Stolen. Her Dignity Taken. Her Rights Denied. Deception Was The Only Option. |
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■映画『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』の主なキャスト | |||||
●ヒラリー・スワンク as ジャンヌ 『 ギフト (2000) THE GIFT 』 『 インソムニア (2002) INSOMNIA 』 『 ザ・コア (2003) THE CORE 』 『 ミリオンダラー・ベイビー (2004) MILLION DOLLAR BABY 』 ●エイドリアン・ブロディ as ニコラ 『 シン・レッド・ライン (1998) THE THIN RED LINE 』 『 戦場のピアニスト (2002) THE PIANIST 』 『 ヴィレッジ (2004) THE VILLAGE 』 ●ジョナサン・プライス as ロアン枢機卿 『 未来世紀ブラジル (1985) BRAZIL 』 『 RONIN (1998) RONIN 』 『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』 『 ロイヤル・セブンティーン (2003) WHAT A GIRL WANTS 』 『 パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 』 『 ブラザーズ・グリム (2005) THE BROTHERS GRIMM 』 ●クリストファー・ウォーケン as カリオストロ伯爵 『 スリーピー・ホロウ (1999) SLEEPY HOLLOW』 『 アメリカン・スウィートハート (2001) AMERICA'S SWEETHEARTS 』 『 マリー・アントワネットの首飾り (2001) THE AFFAIR OF THE NECKLACE 』 『 カントリー・ベアーズ (2002) THE COUNTRY BEARS 』 『 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (2002) CATCH ME IF YOU CAN 』 『 ジーリ (2003) GIGLI 』 『 ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン (2003) THE RUNDOWN 』 『 隣のリッチマン (2003) ENVY 』 『 マイ・ボディガード (2004) MAN ON FIRE 』 『 ステップフォード・ワイフ (2004) THE STEPFORD WIVES 』 |
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【『 マリー・アントワネットの首飾り 』のスタッフとキャスト】 | |||||
監督: チャールズ・シャイア Charles Shyer
製作: ブロデリック・ジョンソン Broderick Johnson アンドリュー・A・コソーヴ Andrew A. Kosove レッドモンド・モリス Redmond Morris チャールズ・シャイア Charles Shyer 製作総指揮: ナンシー・マイヤーズ Nancy Meyers 脚本: ジョン・スウィート John Sweet 撮影: アシュレイ・ロウ Ashley Rowe 音楽: デヴィッド・ニューマン David Newman 出演: ヒラリー・スワンク Hilary Swank ジャンヌ サイモン・ベイカー Simon Baker レトー エイドリアン・ブロディ Adrien Brody ニコラ ジョナサン・プライス Jonathan Pryce ロアン枢機卿 ブライアン・コックス Brian Cox ブルトゥイユ男爵 ジョエリー・リチャードソン Joely Richardson マリー・アントワネット クリストファー・ウォーケン Christopher Walken カリオストロ伯爵 ▲TOPへ |
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<もっと詳しく> | |||||
ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。 |
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■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー 【 マリー・アントワネットの首飾り事件 】 まず、映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の歴史的事実である「首飾り事件」について書いてみる。私にとって、フランス革命と言えば、アニメ『ラ・セーヌの星』。夕方午後5時頃の再放送アニメのゴールデンタイム、主人公シモーヌが女剣士となって革命の足音が聞こえつつあるフランスの悪事を裁く。「マリーを殺せ!」という始まりの言葉、主題歌の合間にある意味不明のフランス語、歴史なんか全く知らない子供だったけど(だからこそ?)、気分はすっかりまだ見ぬ異国の地に飛んでいた。 さて、フランス君主制の基礎を揺るがすことになった「首飾り事件」に話を戻そう。『 グレースと公爵 (2001) L' ANGLAISE ET LE DUC 』の"公爵"、オルレアン公について調べているうちに、彼が関わっているとされるこのスキャンダラスな事件について、興味が沸いてきた。そこでヴィデオ鑑賞。しかし、映画は、事件の首謀者とされるジャンヌ・ド・ラ・モット=ヴァロアを善意のヒロインとして描いたもので、オルレアン公は出てこなかった。まずは、ラ・モット夫人に肩入れせずに「首飾り事件」について以下に簡単に書いた。 フランス革命の直前に、ルイ 16 世の宮廷で起こったスキャンダル。自らをラ・モット伯爵夫人と呼ぶ女性野心家が、王妃マリー・アントワネットから嫌われていることを悩んでいたロアン枢機卿を騙し、彼に王妃の関心を取り戻すことが出来ると信じさせたのだ。ラ・モット伯爵夫人と共犯者たちは、枢機卿に偽の王妃の手紙を渡して二人の文通を偽装し、王妃に扮した女性を枢機卿に対面させるという大胆な計画を実行した。そのお蔭で、枢機卿は、王妃が自分を秘密の代理人にして巨額のダイヤの首飾りを手に入れたいと願っているという嘘をまんまと信じてしまった。ロアンは宝石商から首飾りを手に入れ、それを伯爵夫人に渡した。伯爵夫人の夫はその首飾りをロンドンでバラして売った。ロアンが宝石商への支払いができなかったので、事件が表ざたになってしまう。枢機卿は議会によって逮捕され、裁判にかけられた。彼は無罪となったが、宮廷での地位を失った。ラ・モット伯爵夫人は罰せられ投獄されたが、脱獄してロンドンに逃れ、そこでかなりいかがわしい回想録を執筆した。初めその陰謀の容疑者とされていたアレッサンドロ・カリオストロは無罪となった。贅沢三昧と軽薄さで知られる王妃マリー・アントワネットは、知らぬ間にこの事件に巻き込まれてしまっていた。王妃に敵対する者たちは、彼女が枢機卿を破滅させようと画策したとか、首飾りを手に入れるために自分の魅力を利用して支払いを拒否したとかとほのめかした。民衆の王政への不満が高まる中、そのスキャンダルは民衆の王妃への憎悪も増した。デュマのロマンス「王妃の首飾り」等の有名な文学作品の題材にもなっている。 【映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』のストーリー 】 【マリー・アントワネットの首飾り 第01段落】 1786 年、パリの法廷。被告席に立つ上流階級の女性が話す。「…私は神と世界に誓った。失った人生を取り戻すと…」その女性の名は、ジャンヌ・ド・ラ・モット=ヴァロア(ヒラリー・スワンク)。なぜ美しく意志強固な目をした彼女が、こんな目に遭うことになったのか…。王室の宮内大臣ブルトゥイユ男爵(ブライアン・コックス)は振り返る。 【マリー・アントワネットの首飾り 第02段落】 ジャンヌは5世代に渡って王位に付いた名家、ヴァロア家の末裔であった。しかし、 1767 年にヴァロア家は王家によって取り潰されていた。ジャンヌの父ダルネルは、改革主義者で民衆を代弁する貴族だったからだ。突然現れた王の兵隊に家を襲撃され、目の前で父を惨殺された上に、母親も失意の中で死亡した。悲惨な経緯の末、孤児となったジャンヌには、楽しかった頃の思い出しかすがるものが無かったのだろう。彼女はヴァロア家の再興を胸に誓い、美しく成長していった。 【マリー・アントワネットの首飾り 第03段落】 お金で爵位を買ったと噂されるニコラ・ド・ラ・モット伯爵(エイドリアン・ブロディ)と結婚し、伯爵夫人となっていたジャンヌは、 1784 年、ヴェルサイユ宮殿に現れた。ジャンヌの結婚は、彼女が爵位を得るためのもので、夫である伯爵はコメディ・フランセーズの女優に熱を上げている。そんな噂(真実だけど)が流れている上に、2シーズン前に流行ったドレスを着ているジャンヌに他の貴族からの視線は冷たい。しかし、年増の貴族女性を虜にするジゴロ、レトー・ド・ヴィレット(サイモン・ベイカー)は、彼女の瞳に魅了された。ヴァロア家の再興のために王妃からの同情を得ようとしているジャンヌに、宮廷を知り尽くしているレトーはその流儀を教える。宮廷での望みを叶えたければ、周囲の野望を知ること。そして第一に後ろ盾が必要なこと。宮廷で受け入れられるには、ドレスやマナーにお金がかかるのだ。儀典長からヴァロア家の再興を拒否されたジャンヌに、レトーは彼女の後ろ盾として、フランス宗教界の最高位に立つ大貴族、ルイ・ド・ロアン枢機卿(ジョナサン・プライス)を薦める。 【マリー・アントワネットの首飾り 第04段落】 ロアン枢機卿には"野望"があった。それは宰相の地位だ。しかし、彼の望みは、マリー・アントワネットとの険悪な関係のせいで絶たれていた。マリー・アントワネットは、枢機卿からオスチア(聖餅)さえも受け付けようとはしない。王妃がロアンを嫌うのは、好色で有名な彼が、ウィーンに赴任していたとき、戯れに王妃の母である女帝マリア・テレジアを誘ってしまったことがあるからだ。ジャンヌはレトーの力添えで、王妃専用の便箋とハンカチを手に入れる。 【マリー・アントワネットの首飾り 第05段落】 ジャンヌは意を決してサルヴェルヌのロアン城を訪れた。広大な領地で狩に興じていたが、さすがの放蕩男ロアンは、すぐに木陰で猟犬とたたずむ妖艶な美女ジャンヌに気付く。部屋に招かれたジャンヌは、レトーに書かせた偽のマリー・アントワネットの手紙をロアンに見せ、自分が王妃と懇意であるように振舞った。そしてロアンと王妃の関係の修復に尽力する見返りとして、自分を引き立ててくれるように願い出る。初めはジャンヌを信用せず、とんでもないことを強要しようとした変態の枢機卿だったが、それを拒もうとする彼女の手に王妃の名前が刺繍されたハンカチを見て、掌を返す。 【マリー・アントワネットの首飾り 第06段落】 ロアンの庇護を受ける者は、ジャンヌだけではなかった。医師、錬金術師、催眠術師、魔術師、フリーメーソンといった色々な顔を持つカリオストロ伯爵(クリストファー・ウォーケン)もその一人。迷信深い枢機卿は、カリオストロに絶大な信頼を寄せていた。ジャンヌは地下墓地でのロアンを中心とする怪しげな会合で、カリオストロと初めて出会う。カリオストロは彼が知っているはずの無いジャンヌの過去を語り、自分の霊力の強さを見せつけようとするが、ジャンヌは彼がペテン師であることを見破っていた。その夜は黙って席を立ったジャンヌだったが、翌日、カリオストロを訪ね、彼の協力を取り付ける。 【マリー・アントワネットの首飾り 第07段落】 枢機卿に謝罪を求める"王妃の手紙"を持って現れたジャンヌは、彼が提示した金額の4倍を請求する。権力者であるロアンはジャンヌを脅す。しかし、王妃との関係を切に願う枢機卿の足元を見るジャンヌは、強硬姿勢でその場を切り抜ける。その代わり、王妃からの手紙には柔軟な姿勢を見せるようにした。やがてロアンと王妃の文通の内容は親密なものとなっていく。それと同時に、王妃の手紙を書くレトーとジャンヌの関係も深まっていった。 【マリー・アントワネットの首飾り 第08段落】 ジャンヌの危険を顧みない大胆な手法に磨きがかけられてきた頃、彼女は 2800 カラットのダイヤの首飾りと遭遇する。その頃、ジャンヌはマリー・アントワネットと親しい伯爵夫人として、宮廷で知られるようになっていた(王妃のほうは、全くその事実を知らないが)。ジャンヌの宮廷での活躍を聞いて、彼女に近づいてきたのは、女優の愛人の許から戻ってきた夫二コラだけではなかった。マリー・アントワネットに高額なダイヤの首飾りを買ってもらいたがっている宝石商のベメールとバサンジュである。 【マリー・アントワネットの首飾り 第09段落】 その豪華な首飾りは 2800 カラットで、160万リーヴルもした。現在の円に換算すると、大体 192 億円くらいだそうだ。そんな多額の負債を抱えるベメールは、なんとかこの首飾りをマリー・アントワネットに買い上げてもらいたかった。しかし、王妃は購入を拒否。多分その首飾りがもともとルイ 15 世の愛人、デュ・バリー夫人のために作られたものだったからだろう。(デュ・バリー夫人は、平民上がりの愛妾で、ルイ 15 世の死後、宮廷から追放された。)それに、政情不安の中、王妃自身も贅沢を戒めていたのかもしれない。「いかに美しいとはいえ、そのような高価な首飾りにお金を使うよりも、新しい軍艦を買ったほうが良いわ」という王妃の発言が伝えられている。 【マリー・アントワネットの首飾り 第10段落】 ダイヤの首飾りを宝石商から見せられたとき、ジャンヌはそのキラキラとした輝きに、奪われてしまった自分の幸せを見出した。ジャンヌは自分の計画をレトーに話す。ジャンヌの目的は、首飾りを得て、奪われたヴァロア家の館を取り戻すことだった。王妃がロアンを保証人にして首飾りを購入したがっていると手紙で伝えれば、ロアンは王妃の為に保証人になるだろう。ジャンヌたちの企みがロアンにバレても、共犯者であることが世間に知れて窮地に陥るのは、ロアンである。彼は事件をもみ消すと、ジャンヌは考えたのだ。 【マリー・アントワネットの首飾り 第11段落】 しかし、大金の保証人となるため、ロアンは簡単に話に乗ってこなかった。彼はジャンヌの話の信憑性を確かめるために、王妃との面会を求めた。何とかして首飾りを手に入れたいジャンヌは、マリー・アントワネットに似た街の売春婦ニコル・ルゲ・ドリヴァを見つけた。夫の二コラに誘惑させ、彼女も共犯者にする。 【マリー・アントワネットの首飾り 第12段落】 夏の夜のヴェルサイユ宮殿。ジャンヌの手引きでヴィーナスの木立にやって来たロアン枢機卿は、長年声をかけてもらえなかった王妃との面会に緊張していた。ロアンをそこに一人残し、ジャンヌ、レトー、二コラは茂みから様子をうかがう。そこへ黒いローブを被った女性が現れる。もちろんその女性は王妃ではないが、暗闇とローブのためにロアンは気付かない。女性が「許しはトゲの無いバラです」と手に持っていた一輪の赤いバラをロアンに授けると、感激のロアンは帽子をとって彼女の足元に身を投げ出す。戯れるカップルが現れたために、庭の警備兵が動き出し、深夜の密会はジャンヌたちにとって都合よく終了することが出来たのだ。 【マリー・アントワネットの首飾り 第13段落】 王妃からの特別な愛情を感じたロアン枢機卿は、保証人になることを決め、聖母被昇天の祝日に代金を払うという彼女からの手紙を受け取る。莫大な金額の保証人になったロアンの心の不安は、カリオストロが捏造した神聖な予言によって取り払われた。ジャンヌと口裏を合わせているカリオストロは、ロアンが首相になれるようなことをほのめかした。ジャンヌの家でレトー扮する王妃の使いの男に、ロアンは思い切って首飾りを入れた赤い箱を手渡す。 【マリー・アントワネットの首飾り 第14段落】 首飾りを手にしたジャンヌは、念願だった屋敷を買い戻す。急に連絡が無くなったジャンヌに不安を覚えるロアンに対し、首飾り事件の共犯者たちは贅沢にふけった。そんな中、大喜びの宝石商ベメールは、ヴェルサイユ宮殿を訪れ、購入のお礼の手紙をマリー・アントワネットに渡す。王妃は不審に思い、パリでの宝石の売買に調査が入ることになった。急にダイヤを売り始めたことを不信がられたニコラは、王の兵隊に追われる羽目になり、命からがら逃げ延びる。 【マリー・アントワネットの首飾り 第15段落】 危険が迫りつつあったが、ジャンヌはまだ強気だった。ロアンに対して、彼が王妃宛てに書いた愛を告白した手紙が自分達の切り札になると考えていたからだ。しかし、見当は外れてしまった。悪事は必ず、たとえ大地がそれを覆い隠しても、人の目に立ち現れるものなのだろう。ジャンヌは宝石商のベメールに、王妃は首飾りを買いたくないので枢機卿が保証人を降りるという手紙を書いた。ジャンヌの狙い通り、小心者のベメールはすぐに枢機卿の許に馬車を走らせた。ところが、ベメールの馬車とブルトゥイユ宮内大臣の馬車が鉢合わせてしまう。ベメールの慌ただしさを不審に思ったブルトゥイユは、彼を宮廷で尋問した。 【マリー・アントワネットの首飾り 第16段落】 聖母被昇天の日。両陛下から呼ばれたロアンは、自分の昇進を確信していた。意気揚揚とヴェルサイユ宮殿の鏡の間を歩いていくロアンだったが、彼に渡されたのは「首飾り事件」の調書だった。「お忘れですか?」と、ロアンはマリー・アントワネットにヴィーナスの木立での密会を思い出させようとするが、返事は王妃の怪訝な顔であった。ロアンは、目の前に飾られた絵の中のマリー・アントワネットが着ているローブがあの夜のローブに似ているのを見て、まんまと自分が騙されたことを知る。でも気付くのが遅すぎた。全フランスの枢機卿は逮捕され、バスティーユへと送られた。 【マリー・アントワネットの首飾り 第17段落】 まずニコラが去り、それから、家名のために逃げないと言うジャンヌを置いて、レトーも行ってしまった。ヴァロア家のお墓で、ジャンヌはおとなしく逮捕される。カリオストロも逃げようとしたが、捕まってしまった。 【マリー・アントワネットの首飾り 第18段落】 名誉の回復のため、マリー・アントワネットは公の場での裁判を求めたが、王妃に反感を抱く民衆は、ジャンヌを支持した。 1786 年 5 月 22 日、「首飾り事件」の裁判が始まった。王妃に扮した売春婦ニコル・ルゲ・ドリヴァが証人喚問された。彼女の存在がばれたのは、イタリア国境で捕らえられたレトーが拷問で口を割ったからだった。しかし、拷問で傷ついたレトーに面会したジャンヌは、優しく彼を抱きしめた。 【マリー・アントワネットの首飾り 第19段落】 判決の前夜、雪が降る中、ジャンヌはブルトゥイユ宮内大臣から枢機卿が共犯であると証言するように要求される。この裁判で、枢機卿が無罪になれば、王妃の身の潔白は証明されないからだ。それを拒否したジャンヌの前に、マリー・アントワネットが現れる。ずっと求めていた王妃との面会に、ジャンヌは感激の面持ちである。「私がどんな迷惑をかけたというの」と責める王妃に、ジャンヌは「無視した」と答える。この言葉は、なぜマリー・アントワネットが悲劇の王妃となったのかという、映画の作者が持つ解釈を象徴しているのだろうと思った。無力に立ち去ろうとする王妃に、ジャンヌは「傷つけるつもりでは…」と声をかける。・・・ ▲TOPへ ◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say ! 【マリー・アントワネットの首飾り 第20段落】 裁判の判決。カリオストロ=無罪。レトー=有罪、フランスからの永久追放。ロアン枢機卿=無罪。ジャンヌの判決は下されたが、公開では読み上げられなかった。民意を恐れた国王の命令だ。マリー・アントワネットは枢機卿の無罪に激しく怒り嘆いた。結局、ジャンヌは有罪で鞭打ちの刑に処され、胸にVの焼印を入れられた。Vはフランス語の泥棒「男性名詞 voleur 女性名詞 voleuse 」(映画の字幕では動詞で「 voler 」と書かれていた)の頭文字である。公開で刑に処せられる彼女に、民衆の同情の目が注がれる。 【マリー・アントワネットの首飾り 第21段落】 しかし、この事件で最高刑を受けたのは、裁判にはかけられなかったマリー・アントワネットかもしれない。 1793 年 10 月 16 日、後ろ手に縛られた 37 歳のマリー・アントワネットは、フランス革命の中、ギロチン台で処刑される。実際事件には関与していなかったが、彼女の罪は、フランス王妃としてあまりにも無関心だったことだろう。 【マリー・アントワネットの首飾り 第22段落】 無罪になったロアン枢機卿だが、国王から爵位を剥奪された。生涯不信心を通したという。イタリアに戻ったカリオストロは、異端の罪で投獄され、獄死。ニコラは回想録を書かないという条件で、ロアン家から金銭援助を得て暮らした。レトーは 31 歳年上の伯爵夫人と結婚し、二度とジャンヌと会うことは無かった。イギリスに逃亡したジャンヌは、事件の回想録を執筆し、束の間社会に受け入れられるが、ロンドンのホテルから転落死する。王党派の仕業だとも言われているが、真相は謎のままである。 ▲TOPへ ■映画『 マリー・アントワネットの首飾り 』の感想 映画が描いた、お家の復興だけを願う純粋な女性、もしくは、私がインターネットで調べた、阿漕な女詐欺師、どちらが本当のラ・モット夫人なのだろうか? ジャンヌ・ド・ラ・モット=ヴァロアはやっぱりかなりの悪女だったのではないかなぁと私は思う。調べたところによると、裁判では一貫して自分の作ったストーリーにしがみ付き、王妃の事件への関与を主張し、共犯者に罪をなすりつけようとしたそうだ。また、公開での処罰のとき、彼女は大声で騒ぎ立てて民衆の同情を買おうとし、焼印を押されたときには「焼印を押されるべきなのは私ではなく王妃よ!」という呪いの言葉を浴びせ掛けたという。その上、脱獄後のイギリスでは、ヴェルサイユでのアントワネットの性について悪意に満ちた物語を執筆した。映画のように、レトーとの愛が本物だったなら、脱獄後にイギリスで彼と落ち合っていたと思う。(そうだったら、映画はもっと盛り上がったと思うケド…)ロアン枢機卿の愛人であったという記述も見つけた。事件当時 25 歳だったというから、同じくらいの年代の女性として、ある意味畏敬の念を抱くかも。 映画のオフィシャルサイトの冒頭にあるように、彼女の起こした首飾り事件は、「フランス革命を導いた要因は3つある。7年戦争でのロスバッハでの敗北、オランダ戦争における外交の失敗、そして王室最大のスキャンダル、"首飾り事件"である」と、かのナポレオンに言わしめたほどだ。マリー・アントワネット本人は出廷することは無かったが、公開裁判となったことで、彼女のヴェルサイユでの私生活が民衆の知るところとなってしまった。 1770 年、 15 歳のときにオーストリアからフランスの王妃となるためやって来た彼女が、結婚のフラストレーションや若気の至りで、かなりふしだらで贅沢三昧な生活を送っていたのは確かなようだ。そのお蔭でフランス貴族からの反感も買う。しかし、子供を産んでからは、落ち着いた暮らしぶりだったという。現在の芸能人ゴシップにもあるように、ネタ話に尾ひれ、背びれがつくのは当然だろう。ましてや、当時は今ほど娯楽の無い時代。 1785 年まででさえ、ポルノチックな歌や絵や小冊子において王妃を非難するアングラ文学が存在していたそうだ。 国家財政の危機における莫大な値打ちのあるダイヤの首飾り、淫乱な枢機卿と王妃の深夜の密会、改革派貴族の末裔ジャンヌ、王妃に扮した売春婦が登場する、センセーショナルな事件は、フランス国民の関心を王妃のふしだらな生活に向けさせ、自分達を搾取して快楽にふける王族への憎悪の念を燃え上がらせた。法廷には王妃に不満を持つ多くの貴族が存在していた上に、フィリップ・エガリテことオルレアン公やその他の改革派の貴族から、相当な額の賄賂が渡されたそうだ。不敬罪( lese-majeste )で訴えられていた、フランスを代表する裕福な貴族の一つ、ロアン家のプリンスは見事無罪になり、誰も死刑にはならなかった。フランス君主が望む判決が法廷で得られないのは、前代未聞のことだった。もしかしたら、その時すでに革命は始まっていたのかもしれない。 私がこの映画のように「首飾り事件」を新たな視点で描くなら、王族によって幸せを奪われた、改革派の貴族の娘ジャンヌが、家名の再興と父がなし得なかった民衆のための政治を願う純粋な心を、王位を狙うオルレアン公に操られ(もしくは共謀して)、王家の権威失墜を目的として事件を起こす、という風なストーリーにする。野性的で意志強く見えるヒラリー・スワンクを、『 ジェヴォーダンの獣 (2001) LE PACTE DES LOUPS 』でモニカ・ベルッチが演じた"くのいち"のようなシルヴィアと、リュック・ベッソン監督の『 ニキータ (1990) NIKITA 』を足して2で割ったような女性にすれば、もっとこの映画がドラマティックになったのではないかなぁと思う。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず8667文字/文責:幸田幸 参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集 http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm IMDb allcinema ONLINE Nostalgia.com CinemaClock.com Infoplease.com AlloCINE Marie Antoinette Online 公式サイト(英語版) http://www.affairofthenecklace.com/ |
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■映画『 マリー・アントワネットの首飾り THE AFFAIR
OF THE NECKLACE 』の更新記録 2002/11/01新規: ファイル作成 2005/03/13更新: ◆一部テキスト追記と書式変更 2005/04/29更新: ◆データ追加 2005/08/27更新: ◆データ追加 |
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幸田 幸 coda_sati@hotmail.com |
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