レッド・ドラゴン＠映画の森てんこ森

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レッド・ドラゴン　(2002)

RED DRAGON

　映画『レッド・ドラゴン　(2002) RED DRAGON 』をレヴュー紹介します。

　映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の解説及びポスター、予告編
　ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の映画データ
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の主なキャスト
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』のスタッフとキャスト
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の＜もっと詳しく＞
　＜もっと詳しく＞は映画『レッド・ドラゴン』の「テキストによる映画の再現」レヴュー（あらすじとネタバレ）です。※ご注意：映画『レッド・ドラゴン　(2002) RED DRAGON 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の結末
■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の更新記録

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幸の鑑賞評価：８つ星　

■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の解説及びポスター、予告編

レッド・ドラゴン

Links:	Official Web Site
Trailers:	Quick Time 16.7Mb Quick Time 27.5Mb

■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の解説

　映画『レッド・ドラゴン　(2002) RED DRAGON 』は、アンソニー・ホプキンス扮する人食い猟奇殺人鬼Ｄｒ. ハンニバル・レクターのシリーズ。「羊たちの沈黙」（ 1990 ）と『ハンニバル　(2001) HANNIBAL 』とこの『レッド・ドラゴン』で三部作になっている。『レッド・ドラゴン』のストーリー展開としては、第1作の「羊たちの沈黙」の方にどちらかと言うと似ていて、独房に監禁されているレクターの所に、最近の連続猟奇殺人のプロファイリングをしてくれるように頼む元ＦＢＩ捜査官の話。『レッド・ドラゴン』では、女性捜査官クラリスは出番がなくて、男性の捜査官役エドワード・ノートンにとって代わられている。
　なお、タイトルの『レッド・ドラゴン』とは、麻雀の「中」の漢字の絵柄でもあり、犯人が畏怖崇拝する龍のような怪物の絵の名称だ。殺人鬼には何とレイフ・ファインズが扮しているから嬉しい。レイフの背中一面にその龍のタトゥーが施されていて、裸で屋敷内を駆け回るから見もの。この犯人、死体の部分や臓器を、殺した体から取っておいた上下の歯をまるでマウスピースのように差し入れて食べるから TOOTH FAIRY （歯の妖精）と巷では呼ばれている。

●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.

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■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の映画データ

　上映時間：126分
　製作国：アメリカ
　公開情報：ＵＩＰ
　アメリカ初公開年月：2002年10月04 日
　日本初公開年月：2003年02月08日　予定
　ジャンル：犯罪／ホラー／スリラー

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■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の主なキャスト

●アンソニー・ホプキンス as Ｄｒ. ハンニバル・レクター
『羊たちの沈黙　(1990) THE SILENCE OF THE LAMBS 』
『Ｍ：Ｉ－２　(2000) MISSION: IMPOSSIBLE 2 / M:I-2 』
『ハンニバル　(2001) HANNIBAL 』
『９デイズ　(2002) BAD COMPANY 』
『レッド・ドラゴン　(2002) RED DRAGON 』
『白いカラス (2003) THE HUMAN STAIN 』
『アレキサンダー　(2004) ALEXANDER 』

●エドワード・ノートン as ウィル・グラハム
『デス・トゥ・スムーチー　(2002) DEATH TO SMOOCHY 』
『フリーダ　(2002) FRIDA 』
『 25時　(2002) 25TH HOUR 』
『キングダム・オブ・ヘブン　(2005) KINGDOM OF HEAVEN 』

●レイフ・ファインズ as フランシス・ドラハイド／レッド・ドラゴン
『イングリッシュ・ペイシェント　(1996) THE ENGLISH PATIENT 』
『スパイダー／少年は蜘蛛にキスをする　(2002) SPIDER 』
『ギャンブル・プレイ　(2002) THE GOOD THIEF 』
『レッド・ドラゴン　(2002) RED DRAGON 』
『メイド・イン・マンハッタン　(2002) MAID IN MANHATTAN 』

●エミリー・ワトソン as リーバ・マックレーン
『アンジェラの灰　(1999) ANGELA'S ASHES 』
『ゴスフォード・パーク　(2001) GOSFORD PARK 』
『パンチドランク・ラブ　(2002) PUNCH-DRUNK LOVE 』
『リベリオン (2002) EQUILIBRIUM 』
『ライフ・イズ・コメディ！ピーター・セラーズの愛し方　(2004) THE LIFE AND DEATH OF PETER SELLERS 』

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【『レッド・ドラゴン』のスタッフとキャスト】

監督：ブレット・ラトナー　Brett Ratner
製作：ディノ・デ・ラウレンティス　Dino De Laurentiis
　　　　マーサ・デ・ラウレンティス　Martha De Laurentiis
製作総指揮：アンドリュー・Ｚ・デイヴィス　Andrew Z. Davis
原作：トマス・ハリス　Thomas Harris
脚本：テッド・タリー　Ted Tally
撮影：ダンテ・スピノッティ　Dante Spinotti
編集：マーク・ヘルフリッチ　Mark Helfrich
音楽：ダニー・エルフマン　Danny Elfman

出演：アンソニー・ホプキンス　Anthony Hopkins　Ｄｒ. ハンニバル・レクター
　　　　エドワード・ノートン　Edward Norton　ウィル・グラハム
　　　　レイフ・ファインズ　　Ralph Fiennes　フランシス・ドラハイド／レッド・ドラゴン
　　　　エミリー・ワトソン　Emilly Watson　リーバ・マックレーン　　盲目の女性
　　　　ハーヴェイ・カイテル　Harvey Keitel ジャック・クローフォード捜査官
　　　　フィリップ・シーモア・ホフマン　Philip Seymour Hoffman フレディ・ランズ記者
　　　　メアリー＝ルイーズ・パーカー　Mary-Louise Parker　モーリー・グラハム
　　　　タイラー・パトリック・ジョーンズ　Tyler Patrick Jones　ジョッシュ・グラハム
　　　　エレン・バースティン　Ellen Burstyn　フランシスの祖母の声(uncredited)
　　　　アレックス・リンツ　Alex D. Linz　フランシス・ドラハイド少年時代の声

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＜もっと詳しく＞

ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。

■映画『レッド・ドラゴン　RED DRAGON 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー
　私は日本公開前に字幕スーパーなしの英語で観たので、わかる範囲でレヴューします。映画データについては調査した時点と公開される時点で異なる場合があります。本作の内容については、語学力と経験・常識不足のため、間違いや勘違いや適切でない表現があるかもしれません。どうかご理解賜りますようお願いいたします。また、リンクやメールをいただく場合はここを必ずお読みくださいますように。
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【レッド・ドラゴン　第01段落】　　レッド・ドラゴンという響きから、『キス・オブ・ザ・ドラゴン　(2001) KISS OF THE DRAGON 』等、ジェット・リーやジャッキー・チェンのような中国人俳優のカンフー系の映画かと想像する方もいるかもしれない。でも、この映画は全く別のジャンルで、Ｄｒ. ハンニバル・レクターの第３弾。原作はトマス・ハリスの同名小説「レッド・ドラゴン」で、 1986 年に「刑事グラハム／凍りついた欲望（ MANHUNTER ）」として映画化され、ハンニバル・レクターがキャラクターとして映画界に初登場。人食いの殺人鬼でありながら元精神科医という投獄中の彼の許に、連続殺人犯の心理分析と逮捕の手掛かりをＦＢＩ捜査官が請いに行くというパターンが生まれた。

【レッド・ドラゴン　第02段落】　　それを、主役にアンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターをしつらえて 1990 年に「羊たちの沈黙（ THE SILENCE OF THE LAMBS ）」として再度映画化し、大ヒットを飛ばした。それで、先の「刑事グラハム／凍りついた欲望（ MANHUNTER ）」はビデオ化の際、題名は「レッド・ドラゴン／レクター博士の沈黙（ RED DRAGON ）」と改められたくらいだ。この特異な主人公 HANNIBAL という名前は、「人食い」の意味の英単語 CANNIBAL と1字違いだから、勿論それに掛けて名づけられたのだろう。アンソニー・ホプキンスは
『Ｍ：Ｉ－２　(2000) MISSION: IMPOSSIBLE 2 / M:I-2 』で司令官に扮したり
『９デイズ　(2002) BAD COMPANY 』でＣＩＡ捜査官に扮したり
『白いカラス (2003) THE HUMAN STAIN 』では肌の白い黒人教授に扮したりと、ＴＶを含め 100 本以上の作品に出演しているが、このレクター博士の役は彼の俳優キャリアの中で、一般大衆に最も強烈な印象を浴びせたのではなかろうか。

【レッド・ドラゴン　第03段落】　　さて、「レッド・ドラゴン」、舞台は米国、ボルティモア、 1980 年。サスペンス風の怖そうな音楽から。Ｄｒ. ハンニバル・レクターがオーケストラのコンサート会場にいるところから映画は始まる。上流階級の紳士淑女たちで埋まる客席で、レクターの視線は、オーケストラのフルート奏者、それも中年、丸顔、剥げ頭の男性に注がれている。あれっ、この人、美味しそうなのかしら。そして、その夜のレクター邸の晩餐会で、オーケストラの音楽家の一人が行方不明だと話題に上っている。んん…やっぱり。凝っていて贅沢そうな卓上の料理を見て、盛装の客達は、一体これは何の料理ですかと主人レクター博士に尋ね、一同、美味しがって舌鼓を打つ。それが実は…だとは知る由もない。

【レッド・ドラゴン　第04段落】　　この精神科医レクターの屋敷に、その夜、ＦＢＩの若き捜査官ウィル・グラハム（エドワード・ノートン）が訪れ、連続猟奇殺人が起こっているので、犯人像の分析の手助けをしてほしいと相談する。この一連の殺人事件では、犯人は死体の背中をそぎ取り、腎臓・肝臓など臓器を抜き取ったり、或いは舌や身体の色々な部分をもぎ取ったりしていて、そういうものを保管しているのではなく、どうやら食べているというのだ。非常に猟奇的だ。このグラハム捜査官自身もサイキック、いわゆる超能力の持ち主で、心理的な勘が働く人物である。だから、レクターと話していて感じるものがあり、レクターが席を立った時に書斎のある本に手を伸ばす。すると、そのページに内蔵の美味しいレシピが！ハッと気付いたグラハムの真後ろにレクターは忍び寄り、グラハムの肝臓の辺りをナイフで刺す。苦痛なしに楽に死ねる方法を猫なで声で囁き、グラハムも最期かと思いきや、グラハムはピストルで反撃し、レクターを撃つ。倒れる二人。

【レッド・ドラゴン　第05段落】　　その後、新聞の見出しが次々に映し出される。連続殺人鬼は地元の医師だった！重傷。人食い。退院。裁判。そして、有罪。お手柄のＦＢＩ捜査官ウィル・グラハムは重傷。ＦＢＩ引退。そう、二人とも死んでいなかった。レクターは精神異常とされて死刑にはならず、ボルティモアの精神異常犯罪者病院に収容され、独房に監禁されている。グラハム捜査官は死んだかと思ったのに、入院して全治したらしいが、一度命を捨てたくらいの危険に遭った為だろう、引退してしまったのだ。

【レッド・ドラゴン　第06段落】　　あれから数年が経った。グラハム元ＦＢＩ捜査官は、フロリダのマラソンという町の海辺の家に妻子と平和に暮らしている。危険任務から遠ざかって、幼い息子とボート遊びをしてゆったり生活している。妻はモーリー（メアリー＝ルイーズ・パーカー）、６歳くらいの息子はジョッシュ（タイラー・パトリック・ジョーンズ）。この子役は、
『マイノリティ・リポート (2002) MINORITY REPORT 』のトム・クルーズ扮するジョン・アンダートンの亡くなった息子の６歳の頃の役でも出ている。ここに訪れるのが、招からざる客のＦＢＩの老練な捜査官ジャック・クローフォード（ハーヴェイ・カイテル）。最近の連続猟奇殺人のプロファイリングをしてくれと言いに来たのだ。バーミンガムとアトランタで起こった殺人事件が非常に似ていて、同じ状況であるから同犯人だと思われると。もうその仕事からは手を引いたからと言って断るグラハムだが、クローフォードに被害者の家族写真を見せられてそうも言っていられなくなった。楽しそうな家族の写真。どちらの家庭も夫婦に幼い子供が二、三人の明るい家庭。ペットの猫と犬。

【レッド・ドラゴン　第07段落】　　バーミンガムとアトランタと、遠く離れた地ではあるが、それぞれ一家全員の虐殺なのだ。犯人像を割り出して捕まえなければ、同じように幸福な次の家族が犠牲となる、とクローフォードは強いる。このクローフォード捜査官を演じるハーヴェイ・カイテルは百本以上の映画に出演経験あるベテラン。ここでは渋い演技をしているが、
『リトル★ニッキー　(2000) LITTLE NICKY 』でのサタンのお茶目な役もするし、ロマンティックな芸風もできるし、幅の大きい俳優さんだ。粘りと使命感で負けたグラハムは、遂に決心してクローフォードとフロリダを発つ。夫のお腹に大きく残るレクターに刺された傷跡の悪夢で、妻のモーリーは心配して泣くのだが。

【レッド・ドラゴン　第08段落】　　早速グラハムはアトランタに赴き、リーズ一家惨殺現場に向かう。主のいない犬小屋、マスターベッドルームの鮮血、廊下に続く血の引きずった跡、割られた鏡、子供部屋の壁の血。それを目にすると、グラハムの特殊能力は発揮されて、犯人の動きや殺し方が目に浮かんでくる。それはテープに録音していく。夫をベッドで喉をかき切り、それを止めようとする妻の腹を刺して階下に引きずっていく。子供達は眠っている間に刺された。大きく引き伸ばされた事件現場の写真を何度も見ていると、人形が映像に出てくる。そして、犯人は手袋を取ってリーズ夫人を触った筈だ。夫人の目を調べろ、とクローフォードに電話する。何か目にポイントがあるらしい。

【レッド・ドラゴン　第09段落】　　独房のレクターに面会に行くグラハム。あの時、お互いに刺し、撃ち合って数年ぶりの再会だ。独房の感じは第１弾「羊たちの沈黙」とそっくり。グラハムはアトランタの一家惨殺事件についてプロファイリングを頼むが、すぐに快諾してはくれない。ただし、ファイルを渡してくれれば１時間後にヒントをくれると言う。グラハムはレクターと同じものを持っているからこそ俺を捕まえられたのだともレクターは言う。そして、レクターがプロファイルするところによると、犯人はとてもシャイ・ボーイ（内気な男）だと。なお、この段階では、独房のガラス壁ごしの対面にも拘わらず、レクターが急に顔を近づけるとグラハムは怯えて退いてしまう。するとレクターは、恐怖を克服せよとアドヴァイスするのだ。

【レッド・ドラゴン　第10段落】　　グラハムはもう一度犠牲者のリーズ一家の家に出向いて、参考になる物を更に探す。すると、ビデオ・テープが数本あり、その中にファミリー・ムーヴィーの巻があったので、見てみる。一家の日常生活の楽しく微笑ましい様子が犬と共に映し出される。そして今度は、もう一件のバーミンガムのジェイコビ一家惨殺現場へ急ぐ。ここは林の中にあり、犯人は家の近くの木に登って暗くなるまで隠れていた形跡がある。その木の幹には漢字の「中」のようなマークが彫られていた。それから、ＦＢＩの調べでは、アトランタのリーズ家では、一家が殺害される前に、飼い犬が腹部をやられて獣医に連れて来られたことも判明。ということは、このバーミンガムのジェイコビ家では、飼い猫は庭にでも埋められている筈だ。つまり、犯人は、一番の目的人物を殺す前にペットを準備段階として殺す。そして、夫とか子供を殺し、一番の獲物は成人女性である夫人のようだ。何か鍵があるのだろうか？

【レッド・ドラゴン　第11段落】　　その頃、郊外の古い大屋敷で独り異様な雰囲気で暮らす男がいる。幼い頃の思い出は、厳しい祖母（エレン・バースティン）におねしょを叱られる光景。口汚くフランシス少年（子役アレックス・リンツ）をののしり、二度としたら許さない、ちょん切ってしまうぞと脅している。このフランシスは成長すると（レイフ・ファインズ）、性格が異常となったわけである。唸り声を上げ、目隠しをし、ホルマリンで漬けた上下の歯のついたままの顎を口の中にすっぽりはめ込む。人を殺しては、口からこの部分をとっておき、それをはめ込んでは人体を食うらしい。

【レッド・ドラゴン　第12段落】　　そういう少年は、毎日の虐められ方を細々と書き綴り、その紙をとじて分厚い本にして、屋根裏部屋の金庫に大切にしまってある。題名は「 BEHOLD A GREAT RED DRAGON （偉大なる赤い龍を見よ）」だ。ここで初めて映画のタイトルの言葉が出てきた。その本には、自分の犯した諸々の事件の記事「 TOOTH FAIRY MURDERS （歯の妖精殺人）」の新聞切りぬきや、猟奇殺人の先輩とも言えるＤｒ. ハンニバル・レクターの記事の切り抜きも貼ってある。 TOOTH FAIRY （歯の妖精）だが、 FAIRY はホモとか同性愛者とかいう俗語でもあるように、この殺人犯は幼い頃の祖母による虐待によって女性恐怖症と女性への憎悪が蓄積し、猟奇殺人へとエスカレートしていったらしい。屋敷内で壁に飾られている祖母の肖像画を見ては、常に睨まれているように感じているから、＜見られる＞ことが嫌なのだろう。だから、女性の死体の目に触って何かしたというグラハムの直感は当たっていた。また、新聞切りぬきの目の部分は切り取られている。

【レッド・ドラゴン　第13段落】　　レクターを再び訪れたグラハムは、バーミンガムの犠牲者ジェイコビ一家の木で見つけた「中」について解ったことを知らせる。私達はそれが「中」という漢字であると一目で解るが、西洋人だから解らないのも無理はない。彼は、それが漢字で、麻雀のパイでは＜レッド・ドラゴン＞の絵柄だと伝える。グラハムが帰ると、レクターは独房内の館内用電話を操作してシカゴ大学図書部に難なく電話を繋ぎ、電話口に出た若い女の子を言葉巧みにおだて上げて、ＦＢＩの住所と、グラハムの住まいがフロリダ州のマラソンだと突き止めてしまう。グラハムの妻子が危ない！

【レッド・ドラゴン　第14段落】　　レイフ・ファインズ扮するフランシス・ドラハイドは、＜目＞の関係の研究施設に行って、そこの女性係員リーバ・マックレーン（エミリー・ワトソン）が対応しているのに部屋が真っ暗だなと思ったら、この女性は盲目なのだった。帰りに車で家まで送ってあげると、リーバは部屋にフランシスを誘い、どんな顔をしているのか、笑っているのか、と指で彼の口元を触れようとする。するとフランシスは、悪いことをするのと逆にすぐ帰ろうとして、女性は悲しむ。なお、このフランシス役のレイフ・ファインズの唇には大きな傷跡があるが、これは人間の体を噛んで食べる殺人鬼の設定だからなのだろう。レイフ・ファインズは「シンドラーのリスト」（ 1993 ）、
『イングリッシュ・ペイシェント　(1996) THE ENGLISH PATIENT 』等に出演し、冷たいインテリ風な役が多かったと記憶するが、この映画では、猟奇殺人鬼という彼には珍しい役だ。

【レッド・ドラゴン　第15段落】　　ペンシルヴァニアのＦＢＩ本部。 TOOTH FAIRY からレクター向けのメッセージがトイレ掃除の際に見つかる。そして、レクターの独房では掃除夫がレクター用のトイレット・ペーパーにメモを挟んで巻いている。それで、こういったやり取りで暗号を送り合っていることにＦＢＩは気付き、暗号を読解すると「グラハムの自宅　フロリダ州　マラソン　殺せ」だ。レクターは館内の掃除夫に化けている犯人にリモートコントロールのようにして殺人の指示を与えていたのか。これでレクターはまたもや超危険人物扱いになり、「羊たちの沈黙」同様、口の部分に牙のような物がささっている異様なマスクをかけさせられている。マラソンの町のグラハムの妻子にはＦＢＩのヘリコプターとパトカーが急行してすぐに保護。久しぶりに再会した夫婦はお互いの無事に安堵する。しかし、ホッとしてばかりいられない。グラハムは迫りつつある危機に対応させるため、妻モーリーに射撃の技術をつけさせる。

【レッド・ドラゴン　第16段落】　　グラハムとＦＢＩのクローフォード捜査官は対策を練り、新聞の第一面にグラハムと新聞社のフレディ・ランズ記者（フィリップ・シーモア・ホフマン）の写真を大写しで掲載して、 TOOTH FAIRY の記事を書いた。この連続殺人犯は気が狂っている、と。犯人を刺激させる陽動作戦だ。案の定、フランシスは第１面の写真に引かれて早朝からその新聞を手に入れ、読んで激怒する。俺はレッド・ドラゴンであって、狂気なんかじゃない！フランシスはランズ記者を拉致して屋敷に連れて帰り、パンツ一丁にしてデブデブのランズ記者の体を椅子に粘着液で引っ付けている。ランズ記者が意識を取り戻すと、フランシスは自ら衣服を脱いでヌードになり、（そう、レイフ・ファインズ様が！）背中一面の恐ろしい龍の刺青をボディ・ビルの格好をして見せつける。

【レッド・ドラゴン　第17段落】　　恐怖に怯えるランズ記者に、更に追い討ちをかけて、恐怖の映像を無理やり見せる。それは、世にも恐ろしい光景だった。バーミンガムとアトランタの一家惨殺事件の、「人間の姿のリーズ夫人」「人間の姿のジェイコビ夫人」、つまり、殺す前の怯えているパニック状態の彼女らの映像。次に「変化しつつあるリーズ夫人」「変化しつつあるジェイコビ夫人」。そして、究極は「生まれ変わったリーズ夫人」「生まれ変わったジェイコビ夫人」、両目をくりぬかれ血まみれの彼女らの映像…。

【レッド・ドラゴン　第18段落】　　フランシスはランズ記者にメモの通りにテープに吹き込ませ、「彼はレッド・ドラゴンであって、狂気なんかではない。私はグラハムにウソを書く様に仕向けられた。」等々語らせる。そしてランズ記者を椅子に粘着して動けないまま、何と顔を噛み食うのだ。生きたまま、鼻の辺りを。ランズ記者の戦慄の叫び声とメモの語りのテープはＦＢＩに送りつける。そしてランズ記者は車椅子に火をつけられて凄まじい最期を遂げる。このランズが先ず殺されたと言うことは、あの二件と同様、ペットが先に殺されるという事を暗示している。ランズは、敵のお目当てのグラハムのそばで活動し、ペットみたいなものだったから。いよいよ危ないグラハムと妻子。

【レッド・ドラゴン　第19段落】　　一方、フランシスは盲目の女性リーバと再会し、自宅に連れていく。彼女は多少欲求不満のようで、さかんに自分の方からフランシスを誘う。それにしても、エミリー・ワトソンの盲目の演技は巧くて、本当に目の焦点が合わず、盲人に見える。
『セント・オブ・ウーマン／夢の香り　(1992) SCENT OF A WOMAN 』でもアル・パチーノが盲目の元軍人を演じて彼の俳優のキャリアに厚みを加えた。フランシスはリーズ一家の楽しそうなファミリー・ムーヴィーを音声なしで観、その間は、目の見えない女性はビデオを観ている男に体を寄せていく。ちょっとアブノーマルな二人の様子。フランシスがベッドで目を覚ますと、女性がいない。タトゥの背中で全裸で家じゅうを探し回る男。そして、例のドラゴンの絵を拝んで、彼女は大丈夫だと言い、ライフルを自分の口に当てるが、思い留まり、庭で佇んでいた女性を車に乗せ、旅に出るからお別れだと告げる。どうやら、このフランシスは祖母の影響で女性恐怖症で女性嫌悪だが、いつも祖母の肖像画のきつい＜目＞に睨まれているように、女性に見られると狂気の鬼と変身するのだ。だから、盲目のこの女性は、その対象にはならない。自分でも自分の危険性がわかっているから、自分の許を離れさせたのだ。

【レッド・ドラゴン　第20段落】　　盲目の女性を車から下ろしたフランシスは、ブルックリン博物館に向かい、レッド・ドラゴンのオリジナルを閲覧させてもらう。そして係員の女性二人を殴り殺してオリジナルを食べてしまい、逃走、また盲目女性を連れ去り、自分の屋敷に戻って灯油をまいて火をつける。勝っ手知らない他人の家で、火に囲まれた彼女は可哀想に逃げようがない。その上、すぐそばでフランシスは銃で自決したらしく、銃声と共に彼女の顔に血しぶきがかかる。因みに、火をつけられた車椅子の製造年と製造番号から、ＦＢＩはフランシス・ドラハイドを割り出し、屋敷に急ぐと、既に炎に包まれていた。かろうじて盲目女性は救ったが、彼女はパニック状態だ。・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
　ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !

【レッド・ドラゴン　第21段落】　　マラソンの自宅で、事件がめでたく解決して喜んでくつろぐグラハム一家三人。その時、ＦＢＩでは、フランシスの屋敷の燃え滓の中の遺体がフランシスではないことを発見した。ということは、殺人鬼が生きているということ。グラハムの家に電話をかけるが、一歩遅かった。殺人鬼フランシスつまりレッド・ドラゴンはグラハムの家の中に既に侵入し、洗面所の鏡を割っていた。そう、まさにレッド・ドラゴンのやり方だ。それに気付いたグラハムは台所から包丁を用意して犯人を探すと、息子ジョッシュの首にナイフをつきつけて篭城している。相手は気の狂った男だ。何を言っても諭すことはできない。ジョッシュは怖さのあまり、オシッコをちびっている。その時ひらめいたのが、レクターにアドヴァイスされた、「恐怖を克服せよ」だった。グラハムは突然、態度を変え、息子におもらしを口いっぱいに罵倒する芝居をする。すると、「恐怖の克服」は首尾よく成功した。幼い頃を思い出したレッド・ドラゴンは頭に来てジョッシュを突き放し、その途端、グラハムは格闘して別の部屋にジョッシュと逃げ込んで銃を用意する。

【レッド・ドラゴン　第22段落】　　その時、音に気付いた妻が何事かと２階に上がってきてしまった。モーリー危うし！その瞬間、夫はモーリーを伏させ、グラハムとレッド・ドラゴンは相手が見えないままドア越しに何発も銃を撃ち合う。二人とも胸に弾を受け倒れ込んだ。悲鳴を上げて夫に抱きつく妻モーリー。息子ジョッシュは隠れたベッドの下から出てくる。その時、夫は妻に虫の息で命じる。「奴を撃て、撃つんだ！」そういえば、レッド・ドラゴンは頭を上げつつあるではないか。モーリーはバン・バーン・バーンとレッド・ドラゴンに命中させた。（何事も訓練しておくものだ…幸の教訓）心臓に当たったのだもの、今度こそウィル・グラハムは死んでしまった…。

【レッド・ドラゴン　第23段落】　　と思ったら、ヨットの上で親子三人、全てを悟った顔つきでセーリングしている！「今ごろは傷も癒えていることでしょう、云々。」というレクターからの手紙は海に捨てて。それにしても、この元ＦＢＩ捜査官ウィル・グラハムは、どうしてこんなに不死身なの？

以上。
＜もっと詳しく＞からスペースを含まず８３３５文字／文責：幸田幸

参考資料：「映画の森てんこ森」映画タイトル集
　　　　　　　http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
　　　　　　IMDb
　　　　　　allcinema ONLINE
　　　　　　Nostalgia.com
　　　　　　CinemaClock.com
　　　　　　レッド・ドラゴン　公式サイト（英語版）
　　　　　　　http://www.reddragonmovie.com/

■映画『レッド・ドラゴン』の更新記録
2002/11/30新規：ファイル作成
2004/12/29更新： ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/03/31更新： ◆データ追加

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幸田　幸
coda_sati@hotmail.com

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