ラ・マスケラ
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ラ・マスケラ (1988)
ラ・マスケラ
ラ・マスケラ
LA MASCHERA

【解説】
 映画『 ラ・マスケラ (1988) LA MASCHERA 』は、バゾリーニやベルトリッチの助監督として活躍したフィオレッラ・インファシェッリの 1988 年監督デビュー作。
 『 ラ・マスケラ 』の舞台は 18 世紀のイタリア。ギャンブルと酒に溺れる貴族のレオナルド(マイケル・マロニー)は、ある日、自邸で催した芸人一座の劇に登場したプリマドンナの若い娘イリス(ヘレナ・ボナム=カーター)に一目惚れをする。彼女に言い寄るが、強く拒絶される。レオナルドは何とか彼女に近づこうと、美しい仮面(ラ・マスケラ)を付けるが…。
 『 ラ・マスケラ 』では、ヨーロッパに古くから伝わる物語をベースに、生を謳歌しようとする若い娘、生に執着している、もう若いとは言えない男、そしてそんなことを超越し、死を迎え入れようとしている老人の姿も描かれている。『 ラ・マスケラ 』ではヘレナ・ボナム=カーターがイタリア語を話している。彼女が世界的に知られるようになった「眺めのいい部屋」( 1986 )は、私の大好きな作品。 

●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
■『 ラ・マスケラ (1988) LA MASCHERA 』のデータ
 上映時間 90分
 製作国 イタリア
 公開情報 PARCO
 初公開年月 1989/07
 ジャンル ロマンス/青春
 《米国コピーTagline》
【スタッフとキャスト】

監督: フィオレッラ・インファシェッリ Fiorella Infascelli
製作: リリア・スメッキャ Lilia Smecchia 
    エットレ・ロスボック Ettore Rosboch
脚本: フィオレッラ・インファシェッリ Fiorella Infascelli
    アドリアーノ・アブラ Adriano Apra
撮影: アカシオ・デ・アルメイダ Acacio de Almeida
音楽: ルイス・バカロフ Luis Bacalov
 
出演: ヘレナ・ボナム=カーター Helena Bonham Carter イリス
    マイケル・マロニー Michael Maloney レオナルド
    フェオドール・シャリアピン・Jr Feodor Chaliapin Jr. レオナルドの父
    ロベルト・ヘルリッカ Roberto Herlitzka エリア
ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
<もっと詳しく>

  18 世紀イタリア。 20 歳頃は美男子と謳われた、貴族の青年レオナルド(マイケル・マロニー)だったが、放蕩の限りを尽くし、 30 代後半の今は、酒とギャンブルに溺れる退廃的な生活を送っている。彼は広い庭を持つ邸宅に、彼のことを心配する年老いた天文マニアの父(フェオドール・シャリアピン・Jr)と執事のヴィオラなどの使用人と共に暮らしている。昔は美しかった屋敷の庭も、節約のために庭師を解雇したため、荒れ放題だ。

 そんなある日、公爵に賭けで勝ち、芸人一座を手に入れる。レオナルドは運がいいのかギャンブルは強いようだ。財産に手を付け始めているようだが、貧乏でもないらしい。芸人一座をすぐに追い出すようにヴィオラに言うレオナルドだったが、蜂に刺されたことが原因となったのか、考えを変えて、その夜に芝居を催すことにする。

 幻想的な暗闇の中、庭に設置された舞台の上で、アクロバットが披露される。その後、中国の建築物が描かれた大きな扇が開かれ、劇の始まりを告げる。一座のプリマドンナが舞台に現れる。その美しい若い娘(ヘレナ・ボナム=カーター:『 眺めのいい部屋 (1986) A ROOM WITH A VIEW 』『 モーリス (1987) MAURICE 』『 ラ・マスケラ (1988) LA MASCHERA 』『 ハワーズ・エンド (1992) HOWARDS END 』『 鳩の翼 (1997) THE WINGS OF THE DOVE 』『 ファイト・クラブ (1999) FIGHT CLUB 』『 PLANET OF THE APES 猿の惑星 (2001) PLANET OF THE APES 』『 ノボケイン 局部麻酔の罠 (2001) NOVOCAINE 』等)を見たとたんにレオナルドは恋に落ちる。彼女が演じているのは、怪物のお告げで、男装をして失った恋人を求めて中国の南京まで彷徨っていこうとする娘だ。

 すでに酔っ払っているレオナルドは、衣裳を着替えに舞台を降りたその若い娘の後を追い、自分の気持ちを傲慢にぶつける。気の強いその娘は、レオナルドを嫌がって受け入れようとはしない。そこへ舞台に戻ってこないプリマドンナを連れに、座長がやって来たので、レオナルドはその場を去る。

 朝、泥酔して庭で寝ていたレオナルドが目覚め、屋敷のほうへと向かっていると、4頭の馬の石像がある噴水に溜まった水を鏡に昨夜の若い娘が演技の練習をしているようだ。その美しさに心奪われるレオナルドは、再び彼女に言い寄る。しかし、 17 歳のその娘は、お酒臭い息がプンプンする、中年に差しかかろうとしている男に耐えられない。彼から逃れようと悪口を言う。目が冷たい、優しさが感じられない、気持ち悪い…!あまりの拒絶にレオナルドは彼女を打ってしまう。「大嫌い!」若い娘は行ってしまった。芸人一座は、旅回りを始める。

 恋の病にとりつかれたレオナルドは、仮面(マスケラ)屋を訪ねる。あの娘に近づきたいが、一度拒まれてしまった自分の容姿に自信が持てない彼は、仮面を付けて娘の前に現れようと考えたのだ。もっと若い頃、女性を欲しい侭にしていただけに、レオナルドの顔立ちは美しいが、彼は自分に押し寄せている年月を恐れていた。彼は怪しい魔法使いのような仮面屋の主人に、顔を隠すだけでなく顔に付け加える仮面が欲しいと言う。どうしてそんな仮面が欲しいのかと尋ねる仮面屋に、レオナルドは美しくて野性的な娘のことを話す。彼の望みを理解した仮面屋は、「仮面だけではダメ、私の忠告に従うなら…。」と、昔面倒なことを解決したという仮面をレオナルドに見せる。

 川辺で休む芸人一座。川を歩いて木の生い茂ったほうへやって来る若い娘はイリスという名で呼ばれている。彼女の名前はイリスなんだ。こっちへやって来る。レオナルドは木陰から森の妖精の仮面をつけた顔だけ出してイリスに話し掛ける。イリスは驚くが、自分のことを森の妖精だという、綺麗で不思議な仮面をつけた男のことを気に入る。「もう、行って。」という男の言葉で、後ろ髪を引かれつつも芸人達のところへ戻って行く。

 レオナルドは貴族達と賭けをしているが、いつものようにうまくいかない。途中で気持ち悪くなり朦朧となる。イリスを追うために、移動する芸人一座を探し続けて、疲労困憊しているのだろうか。「仮面をとれと言わないでくれ…。」ベッドの上でうわ言を言い続けるレオナルドは、心配するヴィオラにハッとする。不安に襲われている主人を落ち着かせようとするヴィオラの手を握るレオナルド。

 荒れた庭を見つめるレオナルドは、ヴィオラにまた庭師を雇うように言う。彼は自分の退廃的な生き方を変えようとしているのだ。

 歌劇場で歌の練習をしている一座。男装の女性が恋の歌を美しく歌い上げている。イリスが彼女に合わせて歌おうとするのだが、歌が下手くそなので上手くいかない。すると、美しい男の歌声が劇場に響き渡る。その男の声にあわせて歌うと、イリスの歌はどんどん上手くなっていく。一通り歌い終えたイリスが男の歌声のする方を見上げると、ボックスの観客席から火の様な仮面をつけた男が、彼女に向かって熱く歌いかける。心ときめくイリスだが、男は歌を終えると消えてしまった。

 イリスが徐々に仮面をつけた自分に惹かれてくるのがわかるレオナルドは、興奮して仮面屋を訪れる。今までの彼女へのサプライズは全て上手くいったが、仮面の男が自分であることに気付かれて彼女をがっかりさせるのではと、レオナルドは不安な胸の内を仮面屋に語る。自信を持てば仮面の効力は絶大なので、もう一押しするようにと、仮面屋はレオナルドを励ます。

 不思議な仮面の男の存在に心乱れるイリス。その変化は、もちろん一緒に旅をする芸人達にも伝わる。一座にいる厚化粧の老婆を嫌がるイリスを座長は怒る。座長はイリスが恋していることに気付いているのか、プリマドンナはいなくなりましたと、イリスの前でふざけた様に怒って皆に発表する。イリスが心ここにあらずなのを怒っているのか、それとも男の許へ行ってしまう若い娘の性を怒っているのか。

 木陰で昼寝をするイリスの足元に、例の仮面が2つ入った箱が置かれていた。イリスはこちらを眺めているように待っている馬車の存在に気付く。彼だと思ったイリスは、馬車のほうへと向かう。彼女がそっと馬車の中を見ると、中にはもっと美しい仮面をかぶった男が座っている。イリスは中へと入り、二人で会話をする。仮面を被るレオナルドは、イリスに自分の心を打ち明ける。君を驚かしてみたかった、そして君を知りたかったと。彼には心を開くイリスは、仮面をつけたレオナルドの顔を触ってもいいかと尋ねる。彼女の指が自分の唇に触れ、恍惚とするレオナルド。その様子に気恥ずかしくなったのか、若い娘のイリスは、馬車の中は蒸し暑いと言って、彼を外へと誘う。

 二人で川沿いを歩く。名前の分からないレオナルドのことをルイズと呼ぶというイリスに、レオナルドは「妻より 20 歳年上のアラゴン公かい?」と答えてしまい、自分が彼女よりもかなり年上だということが知られてしまう。しかし、すでにレオナルドに恋をしているイリスにはそんなことは気にならない。「恋されたことは?」と訊くレオナルドに、高慢に「…しょっちゅうよ…。」と答えるイリスだが、レオナルドの反応を確認してからすぐに「恋されたこと、ないわ。」と素直に打ち明ける。また、レオナルドが仮面をとっても構わないと言うのだが…。

 離れたくない二人は、暗くなっても川辺の東屋で過ごしている。「邸に連れて行って下さる?」と尋ねるイリスに、思い切ってレオナルドは本当の自分を明かす手がかりを言う。「4頭の馬の石造のある噴水だよ。覚えてる?」と、自分が彼女に言い寄って嫌われてしまった場所を教えてみる。しかし、イリスは森の妖精しか覚えていないと答える。彼女の心の中には、レオナルドのことなど少しも残っていないのだ。

 レオナルドは、自分のひざの上でうとうとするイリスにせがまれ、母親のことを話す。陽気で楽しそうに振舞う毛皮と香水をまとった母親は、クリスマスの日にベニスで姿を消したのだそうだ。レオナルドの悲しみを理解したイリスは「仮面をとって、私を愛してくれる?」と言って、そっと目を閉じる。

 朝。川に落ちたレオナルドの仮面。そして枯葉の上で一人眠るイリス。

 レオナルドは自分のベッドで後悔の念に襲われていた。そしてまたヴィオラの前でうわ言の様に話し始める。「…君は幻滅しただろうか、僕の素顔を見て…、酒も賭けもやめた、もう何をする気も起こらない…。」あまりにも自尊心の高いレオナルドはイリスの心がわかっていない。なぜなら彼女は森の妖精の仮面をスピックのようなもので突き刺しながら「なぜ逃げたの?」の泣いているのだから。

 レオナルドは父親に母親に去られてからの自分の苦悩を初めて語る。ひどい憂鬱のために頭の中に他の声が聞え、それを酒で紛らわしていたと。それを聞いて父親は全て母親が悪いと言う。レオナルドは続ける。空を眺めると吸い込まれそうで、めまいを感じると。父は答える。それは天文を知らないからだ。彼は星に親しみを感じている。眺めていると、自分の存在、時間、場所を忘れさせてくれるから。無限というのはすばらしいという父の言葉を聞いて、レオナルドは少し分かったような気がした。レオナルドは自分の正体を明かして別れを告げる手紙をイリスに書く。

 元通りに美しくになった庭の中、噴水の前で水面に映る自分を見つめながら物思いにふけるレオナルド。すると、男装をしたイリスの姿がそっと水面に現れる。レオナルドが振り返ると彼女がいる。イリスは「あなたって、本当におバカさんね。」と言い、やさしくレオナルドにキスをするのだった。

 イギリス人のヘレナ・ボナム=カーターが流暢にイタリア語を話すのにビックリ!さすが、元イギリス首相ハーバート・ヘンリー・アスキス伯爵を曾々祖父に持つ上流階級出身女優だと思ったけど、ヨーロッパでは3カ国語を操れるのは当たり前の事みたいだから、大層な事でもないのかもしれない。

 イタリアは水の都ヴェネツィアでは、肉食が禁じられる四旬節を前に、2月から3月頃に祝われる「謝肉祭」の時期に、人々は思い思いの仮面を付けて仮装をし、曲芸やダンス、牛追いなどのイベントを楽しむらしい。中世より盛んになったこのカーニバルは、当時様々な制約に縛られていた人々の心を解き放つものだった。仮装をして仮面をつける事で、身分の差や貧富の差を感じることなく触れ合うことができた。この映画でも、仮面を通して、貴族のレオナルドと芸人の娘イリスは身分・年齢を越えて愛し合う。

 「えっ、もう終わり?」みたいな感じの映画だったけど、おとぎ話を読んでいるような感覚はよかった。この物語は、子供の頃何度も読んだギリシャ神話の本の中にあった、紀元前2世紀のローマの詩人アプレイウスが書いたという「アモール(愛)とプシケ(心)の物語」を彷彿させた。ヨーロッパに多い「いなくなった夫あるいは愛人を探して遍歴する女」のメルヘンの原型ともいう、この物語の内容を参考までに簡単に書いてみる。

−ある国の王様には三人の美しい娘がいた。中でも末娘のプシケはまるで神のように美しかった。彼女の評判を聞きつけた人々が世界中から現れ、その美しさを讃えたため、美の女神ヴィーナスは怒った。そこで息子のアモールに、彼の弓でプシケが世界一醜い男に恋するようにと命令した。しかし、プシケを見たアモールは、その美しさに驚いた弾みで、自分の胸を弓矢で傷つけてしまう。たちまちアモールはプシケに恋をした。

 愛の神アモールがプシケを我が物にしようと願っているため、世の男達は彼女の美しさを讃えるだけで、誰も結婚しようとしない。上の二人の娘はもう結婚してしまったのに、一番美しいプシケがなかなか結婚できないことを嘆いた王様は、アポロンの神殿に神託を伺いに行く。

 アモールがアポロンに頼んでいたので、神託は王様が思うようなものではなかった。喪服を着せたプシケを岩山の頂上に置けば、彼女の運命の夫である翼のある蛇が、彼女を連れ去って行くと神託は王様に告げた。プシケの両親は嘆き悲しんだが、アポロンの神託とあっては、逆らうわけにはいかない。勇気のある娘であるプシケは、逆に両親を慰めるのだった。

 山上に置き去りにされたプシケだが、気持ちの良い西風によって美しい宮殿に運ばれてきた。誰の姿も見えなかったが、プシケはすっかり心打ち解け、恐怖を忘れた。そして夜になると、彼女の夫が彼女の隣に横たわった。姿は見えなかったが、神託が告げた怪物とは全く違う、素晴らしい夫であることが彼女には分かった。

 そんな不思議な結婚生活が幸せに続いていたが、ある時、プシケを心配して二人の姉達がプシケを訪ねてきた。彼女達は予想に反して妹が幸せに暮らしているのを見て、妬ましく思った。そして彼女をたき付けた。そんな姿の見えない夫なんておかしい。いつかは蛇の姿をあらわしてお前を食べてしまうに違いない、と。不安になったプシケは夜自分の横で眠っている夫の姿を見ようと、ナイフを片手に持って、震える手でランプを灯した。しかし、プシケが見たのは、今まで見たこともないような美しい青年だった。夫を裏切ったことを激しく後悔したプシケは、手が震えたためにランプの油を夫の肩に落としてしまう。プシケが自分を覗き込んでいるのに気が付いた夫は、「愛は信頼のないところでは生きられない」と言って、姿を消した。

 自分の浅はかな考えから大切な夫を失ってしまったことを知ったプシケは、残りの一生をアモールを探すために捧げることを決心する。そうすることで、いかに自分がアモールを愛しているかを証明しようとしたのだ。一方、アモールは胸に受けた痛手を慰めてもらおうと、母ヴィーナスの許に帰っていた。ヴィーナスは息子を傷つけたのが、あのプシケだと知って、怒りに燃える。それで、他のオリンポスの神々は、ヴィーナスに憚って、誰もプシケを助けようとはしなかった。

 そこでプシケはヴィーナスの怒りを鎮めようと、召使いになるために彼女の許を訪れる。それに、もしかしたら、アモールの行方がわかるかもしれない。ヴィーナスはプシケに苦しい試練を与えたが、アリや川岸の葦や鷲に助けられてプシケはやり遂げることができた。息子の看病でやつれてしまったと感じるヴィーナスは、美しさを取り戻すために、地獄の女王プロセルピナから美を分けてもらってくるようにと、最後の試練としてプシケに箱を一つ渡した。彼女は今度も助けを借りながらも立派にやり遂げることができた。

 しかし、箱の中身が気になるプシケは、愛しい夫に会うときに長い間の苦労でやつれた顔を見せるなんてと、好奇心と虚栄心で箱を開けてしまう。箱から立ち上がった煙で、プシケは眠りに落ちる。

 すっかり傷が癒えたアモールは、愛するプシケを探しに、母に閉じ込められていた部屋から抜け出した。彼は城門近くに倒れていたプシケを助け、彼女の好奇心と虚栄を少し叱ってから、大神ジュピターの許へと連れて行った。二人の結婚を認めたジュピターは、神々を集めて、二人を正式に結婚させることを発表した。

 こうしてアモール(愛)とプシケ(心)は、辛い試練を超えて、本当の幸せをつかむのだ。 END

 庭で開かれた劇の中、イリスが演じる娘は男装をし、失われた恋人を捜し求めようと出発する。イリスの探す運命の恋人は目の前にいるレオナルドだ。しかし、彼は母親を失った悲しみと、日々若さを失っていくこと(死の恐怖)に耐えられず、心を失い、堕落した生活を送っている。最初の二人の出会いのシーンは、イリスがレオナルドの心を求めて旅立つことを表していると思う。そして最後のシーンで、更生したレオナルドの許に再び男装をしてイリスが現れたことからも、そのことは明らかだと思う。

 アモールは神なので若さを失うことはないが、美しい容姿にマザコンという設定は似ている。また、旅芸人の娘であるイリスだが、父親が劇中でいつも王を演じていることから、自分は王様の娘だと言うセリフがある。彼女は三人姉妹ではないと思うが、プシケと同様に王様の娘なのだ。プシケの場合は暗闇、イリスの場合は仮面で愛する人の本当の姿が分からない。その真実を全てを知りたいという欲求から、プシケもイリスも一度は大切な人を失ってしまう。プシケの物語の方では、浅はかだったのは女のように描かれているが、この映画では、<おバカさん>は男のレオナルドのほうになっている。古代と現代の大きな違いだ。

(■解説とネタばれ:2002/08/24アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/05)
以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず6714文字/文責:幸田幸

参考資料:「ラ・マスケラ〜THE VENETIAN CARNIVAL〜」HP
       「eでじ!!映画館」HP
       山室 静(著)「ギリシャ神話」
       allcinema ONLINE
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